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【王位戦】加藤一二三が「84歳にして初めて見た」という藤井聡太の「矢倉破り」に渡辺明がうなだれた

 将棋の藤井聡太七冠の「永世王位」資格獲得がかかる第65期王位戦7番勝負第4局は8月19日と20日の両日、佐賀県唐津市の旅館「洋々閣」で指し継がれ、後手の藤井七冠が100手で勝利した。藤井王位が対戦成績を3勝1敗とし、5期目に向けた防衛に王手をかけている。

 対局後、挑戦者の渡辺明九段は自身のXで、次のように後悔の念を綴った。

〈先手番なのに早々と悪くしてしまい、どう粘るかという将棋にしてしまいました。勝負手を探すために時間をはたいて封じ手にしてるのに(その時点で失敗してるけど)それが発見できてないし(感想戦で出た▲35桂なら難しいところもあり、局後にすぐ藤井王位に指摘された)。本譜、バサバサと駒を切って76手目△56歩までの手順も見えてなく、もう少し粘れるのかと思っていました。ひどい内容で恥ずかしいです〉

 そして「穴があったら入りたい」を意味するであろう、透明人間と穴と土下座の絵文字で締めくくったのである。

 魔王こと渡辺九段が嘆くのも無理はない。この第4局は「過去の戦法は終わった」エポックメイキングな対局として語り継がれるからだ。

 渡辺九段が触れた「封じ手」とは、自分の王将を金将、銀将などで囲う城の「櫓」に見立てた「矢倉囲い」という、堅守に徹した戦法のこと。藤井七冠の対局で多く見られる「相居飛車戦」で有効とされてきた。

 史実ではなんと1618年の棋譜に登場、戦後に升田幸三九段と大山康晴十五世名人の死闘にも何度も登場し、改良を重ねてきた現代将棋の「定石」になっている。米長邦雄永世棋聖は「矢倉は将棋の純文学」という名言を残しており、初級者から上級者にまで愛される戦法だ。

 そんな「矢倉囲い」だが、令和に入り藤井七冠が破竹の勢いを見せるや、プロ棋士の間で「矢倉は終わった」とのボヤキが聞かれるようになった。藤井七冠には「矢倉囲い」が通じないからだ。

 王位戦第4局は、渡辺九段による「矢倉は本当に終わったのか」を検証する、壮大な実験だったと言っていい。ところが藤井七冠は後手54手目で人工知能(AI)が予測した最善手や解説者の解説を完全に覆す「7五歩」という「伏兵」で矢倉を崩しにかかり、初日から形勢を圧倒的有利に持ち込んだ。

 これには日刊スポーツ将棋欄の解説者「ひふみん」こと加藤一二三九段が「深い研究に裏打ちされた指し手を、84歳にして初めて見ました」と感嘆。

 藤井七冠は多忙な対局の合間にAIを駆使して「矢倉破り」の新しい戦法を何千回と試行錯誤していることが伺い知れた。対局を見守るファンは、藤井七冠の差し手についていくのがいっぱいいっぱい。過去の戦法と新しい知識をスポンジのごとく吸収し、デジタル機器を難なく扱う子供や若手棋士でもないと「藤井聡太爆誕」以降、飛躍的に進歩する「AI難解将棋」についていけなくなりつつある。

 不惑の魔王ですら意気消沈、2時間37分(157分)もの長考に及んだのは致し方ないと言える。

 その渡辺九段だが、第3局の函館決戦に続き、第4局でも、

〈昼食とおやつは充実していて、全部食べたかったです〉

「洋々閣」が準備したシャトーブリアンステーキ丼や佐賀牛ローストビーフ丼、くず餅を凍らせて時間が経つごとに食感が変わる「くず餅氷」など、眺めているだけでも唾が溢れる勝負メシ、勝負おやつの全メニューを紹介してくれた。地元サービス、ファンサービス精神に富んだ渡辺九段が、王位戦をこのまま終わらせるはずがない。ここから盛り返してほしいものだ。

(那須優子)

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