先代の師匠も草葉の陰で頭を抱えているに違いない。今年2月に新体制で始動した錣山部屋の評判がイマイチなのだ。どうも、新師匠夫妻に代替わりして部屋の空気がガラリと変わってしまったようで‥‥。
「親方と弟子たちが友達さながらで、緊張感のカケラもない。稽古こそ真面目にやっていますが、先代が生きていた頃のようなピリついたムードは一切ありません。完全にぬるま湯です」
こう言って部屋のユルユル窮状を嘆くのはさる角界OBである。
「土俵の鉄人」として名を馳せた先代親方の元関脇・寺尾(享年60)がうっ血性心不全で鬼籍に入ったのが昨年12月のこと。以来、部屋を引き継いだのが、部屋付き親方として後進を指導していた現在の錣山親方(43)=元小結・豊真将=である。
「今年の初場所までは、『立田川』という年寄名跡で『師匠代行』の立場でした。2月に『錣山』に名跡交換をして部屋を完全継承。ただ、弟子たちからは師匠というよりは単なる〝先輩〟としか見られていません。というのも、親方と力士とでパチンコに行くのが日常茶飯事なんだとか。つい先日も、タニマチに誘われた食事会の帰りに弟子たちから『これからパチンコで一勝負します』と軽口を叩かれるなり、『じゃあ、俺も行きたい』と目を輝かせて一緒に行ってしまったそうです」(前出・角界OB)
若い衆を引き連れて遊技場に足を運ぶのは現役時代から見慣れた光景だった。
「プライベートはインドア派で趣味といえば、たまのパチンコぐらい。本名の『洋介』をもじって『ケチすけ』と先代にもイジられていたほどの倹約家として知られていましたが、同行した若い衆には1万円から2万円を軍資金として渡す一面もありました。しかも、大勝ちしても『自分のために使え』と気前がいい。そんな性格だけに、後輩の関脇・阿炎(30)を含めて下から慕われています」(前出・角界OB)
それでも、部屋と同じビルで暮らす先代の家族は複雑な心境を抱えているようで、
「1階から4階が相撲部屋で5階と6階には先代の家族が住んでいます。生活の中で新しい親方と弟子の〝なあなあ〟な雰囲気を垣間見るだけに我慢ならないんだと思います。親しい関係者に『先代は礼儀や上下関係に人一倍厳しい人でしたので、あり得ない‥‥』と愚痴をこぼしているようですからね」(前出・角界OB)
もっとも、部屋の経営を握っているのは〝シン女将〟だ。部屋の伝統を継承するどころか、「脱・寺尾」に舵を切ろうとしている。
「かつて、親方と『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日系)に出演して話題になった美人妻です。いち早く先代の色を消したいのでしょう。すでに、7年以上にわたって先代の身辺を世話してくれたマネージャーや千秋楽パーティーの司会をお願いしていた落語家との関係をバッサリ切ってしまった。さらに、部屋を継承するタイミングで先代家族に『部屋の運営には一切口を出さない』という類の誓約書にサインをさせたといいます。3年以内に都内に部屋を引っ越す計画まである」(前出・角界OB)
ところが、そんな矢先に肝心の夫婦関係が土俵際を迎えていようとは‥‥。後援会関係者が耳打ちする。
「単なる夫婦喧嘩とは呼べないレベルまで親方と女将さんの仲がこじれてしまっている。別居生活が続いていて、女将さんは部屋にも顔を出さなくなったと聞きました」
先が思いやられるばかりである。