「私は1票だけでいい」捨て身の単身出馬で相撲協会理事候補選に挑んだ貴乃花親方。しかし、結果はあえなく惨敗。日馬富士暴行事件に端を発した協会とのガチンコ決戦のリベンジに失敗した形だが、その一門会は怒号飛び交う内紛状態だった。
2月2日、今後の角界を大きく左右する相撲協会理事候補選の結果が明らかになった。これにより昨年10月に起きた元横綱・日馬富士による貴ノ岩暴行事件に端を発する、貴乃花親方(45)による「貴の乱」第2幕は大きな曲がり角を迎えることになったのだ。
相撲協会の改革を掲げ、古来からある相撲道の伝統に回帰する一方で、モンゴル互助会の粉砕に邁進してきた貴乃花親方だけに、今回の理事選での惨敗は大きな禍根を残すことになりそうだ。
スポーツ紙相撲担当記者が理事選の裏事情を説明する。
「今回の『貴の乱』の敗因はズバリ一門の絆をがっちり固めることができなかったことにあります。10票あれば当確といわれる理事選で、貴乃花一門はもともとの8票、新たに加入した元二所ノ関一門の親方が3票、合わせて11票を持っていた。それだけに、仮に貴乃花親方1人だけが出馬していれば文句なく理事に返り咲くことが確実だった。しかし、貴乃花親方の再出馬に反対する親方が多かったため、阿武松(おうのまつ)親方(56)とのダブル出馬に切り替わったのです」
貴乃花親方といえば、一門の名前を冠するほどの「平成の大横綱」として、また相撲協会改革派の若手親方の代表格として一門内外からの求心力があった。ところが、今回の貴ノ岩暴行騒動以降の一連の相撲協会への背信行為や「貴乃花文書」と呼ばれる檄文の配布などでシンパが激減。そのため理事選を控え、理事候補を調整するために開催された一門会も常に紛糾する有様だったという。
「これまでは一度の話し合いで貴乃花親方の一本化がすんなり決まっていましたが、今回ばかりはまったく一門の意思統一ができず、1月だけでも2度開かれたほどです。特に2度目の開催となった1月28日の会合では、理事選間近ということもあり、怒号が飛び交うほど紛糾したのです。というのも、一門はもともと阿武松派と貴乃花派に分かれていたが、新たに時津風一門から合流した錣山親方(55)=元関脇・寺尾=が貴乃花親方に対し、『もうあなたの下ではやってられない!』と反旗を翻し、阿武松親方の支持を表明したことで事実上の候補者一本化が不可能となったのです」(相撲部屋関係者)
当初、錣山親方は昨年12月末に、湊親方(49)、立田川親方(36)らとともに時津風一門を離脱。元横綱・日馬富士による貴ノ岩殴打事件により孤立無援となっていた貴乃花親方の援護に回るものと思われていた。しかし、その内幕はまったく逆で、貴乃花親方に鈴をつける立場に回ったのだ。