ドイツ・ブンデスリーガが開幕し、王座奪回を目指す名門バイエルン・ミュンヘンは第1節でヴォルフスブルクと対戦。一時は逆転を許すも3-2で競り勝ち、白星スタートを切った。
王座奪回のために、今季からヴァンサン・コンパニ監督が就任し、補強の第1号が移籍金3000万ユーロ(約48億円)で4年契約を結んだ日本代表のDF伊藤洋輝だ。
バイエルンは昨夏にも、韓国代表のDFキム・ミンジェをアジア人歴代史上最高額の移籍金5000万ユーロ(約80億円)で獲得しているだけに、開幕前から日韓のポジション争いが注目された。
だが、伊藤は7月末の練習試合で足を踏まれ、右足中足骨を骨折。長期離脱を余儀なくされていることで、開幕戦はキム・ミンジェが先発出場したのだが、後半10分に右サイドで相手にプレッシャーを掛けられてボールを奪われると、そのままカウンター攻撃を受けてゴールを奪われる失態の原因を作ってしまった。
海外で取材するサッカーライターが話す。
「このプレーにバイエルンのサポーターは怒り心頭で、試合から数日経っているにもかかわらず、SNS上は目を覆いたくなるような罵詈雑言が収まる気配がありません。ミスをすれば叩かれるのはスポーツ選手の宿命ですが、度を超えるレベルに達しています」
まだ開幕戦を終えたばかりだというのに、韓国史上最強DFが窮地に陥る背景には、昨シーズンの〝伏線〟があった。
チャンピオンズ・リーグ準決勝のレアル・マドリード(スペイン)戦では、チームの売りである積極的なディフェンスが裏目に出てしまった。前出のサッカーライターが振り返る。
「ファーストレグ(第1戦)は2-2で引き分けたのですが、試合後にバイエルンのトーマス・トゥヘル監督(当時)が『守備をする時に攻撃的に出てはいけない』『賢さが足りない』など、2失点に絡んだキム・ミンジェを名指しで批判したんです。これで我が意を得たりとばかりに、サポーターの怒りの矛先が向けられ、シーズン無冠の戦犯扱いまでされました」
キム・ミンジェとしては、今季の開幕戦で汚名返上をしてファンの信頼を取り戻したいところだったが、火に油をそそぐ結果になってしまったのだ。
「相次ぐ失態にサポーターの間では、伊藤待望論が急浮上しています。ただ、伊藤としては複雑な心境かもしれません。バイエルンに合流して右も左もわからない時に、サポートしてくれたのがキム・ミンジェでした。兄貴的な存在であり、ケガから復帰後は実力でポジションを奪うことが必要ですし、アジア人コンビで超名門クラブのセンターバックを担うことさえ考えられるからです」(前出・サッカーライター)
この先、キムと同じように伊藤に容赦ないビッグクラブの洗礼が待ち受けているのか。まずは、一日も早くピッチに立つ姿を見てみたいものだ。
(風吹啓太)