夏の全国高校野球が終了し、約1カ月ぶりに地元・甲子園球場へ戻って来た阪神は、8月31日・9月1日に行われた巨人戦に1勝1敗(30日は台風10号の影響で中止)。巨人に代わって再び首位に立った広島とのゲーム差は今季最大の5.5となり、逆転Vは非常に苦しい状況へと追い込まれた。
31日の先発は阪神・才木浩人と巨人・戸郷翔征というエース対決。才木が初回に2点を失い、阪神打線は5回までわずか1安打という苦しい展開。完封負けを予感させるような嫌な雰囲気をひっくり返したのは佐藤輝明だった。
6回裏二死一、二塁で打席に立った佐藤は左中間へ大飛球。台風の影響をもろに受けた風に乗ったこの打球はスタンドへ突き刺さる逆転3ラン本塁打となり、この回さらに1点を追加した阪神が4-2で初戦をモノにした。
「前の2打席は連続三振だったサトテルですが、この打席は強引にいかずに左中間方向へ。風を計算に入れたような一振りで流れを変えました。この初戦を落とすとアレンパに向けて厳しい立場に追い込まれるところでしたが、なんとか土俵際で踏みとどまった。2戦目に向けて勢いに乗る勝ち方だと思われたのですが…」(在阪スポーツ紙デスク)
だが必勝を期した1日の第2戦、やはりポイントは佐藤だった。
西勇輝と菅野智之のマッチアップとなったが、前日とは反対に阪神が1点を先制し、4回に巨人が同点に追いつく展開。台風から熱帯低気圧へと変わった影響で、雨は徐々に強くなっていく。試合途中でコールドになる可能性が強まる中、先に動いたのは巨人だった。
7回表、大城卓三のヒットによる無死一塁で増田大輝を代走に送ると、続く吉川尚輝は三塁線へ送りバント。これをサード・佐藤が一塁へ悪送球で無死一、三塁とピンチを拡大させてしまう。そして門脇誠のタイムリーで勝ち越した巨人は、なおも無死一、三塁で小林誠司が三塁線へスクイズ。佐藤がバックホームするも間に合わず3点目を献上する。
試合は7回裏が終了したところで雨天コールド。阪神は痛い敗戦を喫したのだ。
前出の在阪スポーツ紙デスクが肩を落とす。
「勝っても負けてもサトテルです。7回表、大城の三遊間への打球は佐藤が取り損ねましたが、あれは上手い三塁手なら取っている当たり。その後、巨人は守備に難がある佐藤を徹底的に狙ったバント攻めで攻略に成功しました。対する阪神は4~7回まで毎回のようにヒットのランナーを出しましたが、攻め手を欠いてしまった印象。雨でコールドになる可能性を考え、もう少し早く動くべきでした。先に勝ち越して、佐藤に守備固めを使えていれば結果は変わっていたはずです」
阪神・岡田彰布監督は試合後に「しゃべる気にもならんよ、消化試合ちゃうんやから」と怒り心頭。続けて「台風の雨やろ。3試合中止にしてるところ(バンテリンドームの中日×DeNA戦)もあるのにお前…」とまくし立てた。
「岡田監督の怒りの矛先は、台風の雨の影響が予想される中で試合を決行したセ・リーグに向けられました。雨天などの場合の試合開催の可否は通常ホームチームが決めるのですが、セ・パ両リーグは8月27日の試合からアグリーメントにより連盟管理説/連盟特別管理試合となっており、試合挙行の可否の決定は連盟に委ねられていたのです。従来通り本拠地球団が開催を決定するならば、阪神はこの日の試合は中止にしていたかもしれませんが…」(スポーツライター)
とはいえ、両球団の条件は五分。コールドを見越し、集中して1点を取ることにこだわった阿部・巨人に勝利の女神は微笑んだのは当然の流れだった。
阪神の「アレンパ」は夏の台風とともに去っていく…。
(石見剣)