自民党総裁選(9月27日投開票)に出馬を表明した河野太郎デジタル相は、派閥の裏金事件に関係した旧安倍派の議員らに対し、政治資金収支報告書の不記載額を返納するよう求めている。「不記載と同じ金額を返還していただくことで、けじめとするのがいい」と強調しているのだ。ただ、党内からは、
「けじめをつけるべきはむしろ河野さん自身ではないのか。アンタには言われたくない」(旧安倍派議員)
との猛反発が出ている。それは河野氏とファミリー企業との関係だ。
河野氏の弟が社長を務める「日本端子」(神奈川県平塚市)は、中国に複数の関連企業がある。河野氏本人もかつては経営陣に名を連ね、今も株式を保有している。
河野氏は2022年6月、「日本端子を中国に人質に取られたら、河野太郎は中国の肩を持つのではないか」との疑問が出ていることに対し、自身のサイトで次のように反論している。
〈河野太郎は、日本国民と日本のために政治を行っているのであり、一企業のために政治活動をしていません〉
河野氏は2021年の総裁選でもこの問題を追及された際にも、
「何か特定のために政治活動を歪めるつもりは全くない。中国との間で言うべきことはきちんと言うのは、非常に大事だと思ってやってきた。中国寄りということはない」
そう述べると同時に、何も問題はないとの認識を示した。
もっとも、河野氏が問題ないと主張しても、相手がどう思っているかはわからない。先の旧安倍派議員は、
「仮に河野さんが自民党総裁となり、首相に就任したとしたら、中国にとって『日本端子』は格好の『人質』と映るだろう。河野さんがなんと言おうと、その事実は変わらない。経済安全保障が叫ばれる中で、自分の会社のことは棚上げにしておいて、同僚議員に向かって『けじめをつけろ』なんて、ブラックジョークでしかない」
このままでは前途多難なのである。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)