社会

【素朴な疑問への残酷な答え】福祉施設に入る貧困児童はなぜ「生活保護」を受給できないのか

 パリパラリンピックで日本代表が金メダルを獲得した車いすラグビーも、車いすテニス界のホープ小田凱人の活躍にもいっさい触れることがなかった、日本テレビの「24時間テレビ 愛は地球を救うのか?」。

 パリパラリンピックを完全スルーし、児童福祉施設と能登半島地震被災地にスポットが当てられたが、視聴者の中には「経済的事情で子供が施設に入るなら、なぜ生活保護の受給申請をしないのか」という素朴な疑問を抱いた人がいるかもしれない。

 日本では子供の7人に1人が貧困児童と言われる。なぜ貧困児童には日本国憲法で保障されているはずの「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されないのか。そこには日本の社会保障制度をめぐる闇があった。

 例えば多くの飲食業従事者、サービス業従事者が職を失った2020年以降、安倍政権⇒菅政権⇒岸田政権の新型コロナ禍を例にとってみよう。

 住宅ローンや家族の生活費を捻出できず、路頭に迷う人たちが役所の生活保護申請窓口や、一時金借入相談のため社会福祉協議会に行っても「人材派遣会社に登録してすぐに働けばいいじゃないか」と門前払いされた、歴然たる事実がある。

 そういう筆者もまた、同じ経験をしている。新型コロナ禍当時、勤務していた障害者福祉施設で新型コロナのクラスターが発生、長期間の休業を余儀なくされた。そこで「休業支援金、給付金」の申請窓口である地元の社会福祉協議会に行ったところ「看護師の資格があるなら『パソナ』の派遣に登録すれば休業支援金、給付金なんて必要ない」と追い払われた。

 支援金給付金の申込書の代わりに窓口職員が出してきたのは、自公政権や政府の諮問会議の委員を歴任していた竹中平蔵氏が当時会長を務めていた人材派遣会社「パソナ」への「登録書類」だった。

 国内の人材派遣会社は4万社、派遣従事者は140万人を超える。にもかかわらず、役所や社会福祉協議会の窓口が特定の人材派遣会社への登録を斡旋するというのは、あまりに露骨すぎやしないか。

 なぜそんなことが許されているのかといえば、役所や福祉事務所の窓口業務が、特定の人材派遣会社やNPO法人に「丸投げ」されているからだ。

 厚労省のサイトには、生活困窮者の生活保護申請を含めた「自立支援事業」の委託先一覧が公開されている。この一覧表は有権者、納税者なら一度は見ておく価値がある。都内だけでも世田谷区、八王子市などが生活困窮者への「自立支援事業」がパソナに業務委託されているほか、同サイトには区社会福祉協議会と書かれているものの、千代田区や新宿区、港区、江東区、北区は就業支援や育児支援事業をパソナに業務委託している。

 ちなみに経済的に困窮し、児童養護施設に預けられていた今年の「24時間テレビ」チャリティーランナー・やす子と安倍晋三元総理の地元である山口県でも、下関市などがパソナに「自立支援事業」を事業委託している。

 この国の社会保障制度はもはや「官営」「公営」ではなく、一部の民間企業やNPO法人が実務を掌握しているのだ。

 だから「子供を抱えて生活に困っている」貧しい親が役所や福祉事務所に相談に行ったところで、「生活保護申請」に辿り着くのは不可能。生活保護申請窓口には丸投げ業者、中抜き業者が「虎口」のように待ち構え、シングルマザーや無職、病気や障害を抱えた親が、育児との両立が困難な夜勤ありきの医療介護施設、福祉施設の就労を斡旋される。幼い子供を自宅に残して、老人や障害者にご奉仕する業務に就けと「圧」をかけられるのだ。

 こうなると、貧しい親子がそれまでの生活を持続することは困難。自民党に近い人材派遣会社、あるいは野党に近いNPO法人が多角経営する事業所に、蜘蛛の巣に引っかかった獲物のように、親子ともどもからめ取られる。親は医療介護施設、福祉施設で労働搾取され、子供は養護施設で人質に…といった具合だ。貧困世帯は永遠に貧困スパイラルから抜け出せない。

 日本テレビが今年は「施設の子供に募金を分配する」と言ったところで、貧困親が低賃金で労働搾取されている障害者福祉施設から、その子供が搾取されている養護施設へと、バラマキ先が変わったにすぎない。「自転車がほしい」「進学したい」と切実に訴える子供たちが間接的に食い物にされている社会構造の闇は変わらないのだ。

 岸田文雄総理の親族が「人材派遣会社」を経営しているのは有名な話。人材派遣会社が全て悪というわけではないが、自分の選挙のことしか考えていない自民党の国会議員、地方議員は自民党新総裁にまた「貧困ビジネス利権」「中抜き利権」ズブズブの候補者を選び、政治献金で肥え続けることだろう。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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