社会

ホントーク〈西山厚×名越健郎〉(2)早朝の奈良散歩で聖地を実感!

名越 奈良は時間の流れがゆっくりしているとか、ホッとするという話をよく聞きますが、それも1300年前の物が今も残っていて、進化が止まった結果なのでしょうか。

西山 田舎だからかもしれません(笑)。深くて豊かでゆっくりとした、古代と重なり合うような時の流れがあるので、そこに身を置くと、こちらもゆったりしてきます。

名越 逆に欠点はありませんか。

西山 奈良国立博物館に就職してからも、4年間は、京都から通っていました。奈良はお店が早く閉まる。飲めない(笑)。でも仕事の終わりが遅く、終電に間に合わないことも多くて、遂に奈良に引っ越したら、すぐに奈良が好きになりました。ゆったりしていて、人が少ないのがいい(笑)。

名越 私のような初心者が奈良の魅力を感じるには、どこを見ればいいですか。

西山 1カ月ほど暮らしてみたら?

名越 1泊2日で何とかなりませんか。

西山 まず東大寺の二月堂へ行きましょう。舞台から奈良が一望できます。1300年前とあまり変わっていません。翌日は早起きして春日大社へ。参道の右手に広い飛火野があり、鹿の群れに出会えます。飛火野の東に御蓋山、その向こうに春日山があります。そこから太陽が昇ってくるのが何とも言えず神々しく、ここが聖地だとわかります。

名越 それは体験してみたいですね。

西山 早朝に、東大寺の二月堂あたりへ行くのもお勧めです。お坊さんがひとつひとつのお堂の前でお経を唱えて歩いている姿を目にできます。こんな時間にこんなことをしてるんだ!「奈良はいいところだな」と思えるかもしれません。

名越 西山さんが勧める奈良は、とても親しみやすさを感じます。

ゲスト:西山厚(にしやま・あつし)奈良国立博物館名誉館員、東アジア仏教文化研究所代表、帝塚山大学客員教授、半蔵門ミュージアム名誉館長。徳島県鳴門市生まれの伊勢育ち。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。奈良国立博物館で学芸部長として「女性と仏教」など数々の特別展を企画。奈良と仏教をメインテーマとして、人物に焦点を当てながら様々なメディアで活動を続ける。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)、「独裁者プーチン」(文春新書)など。

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