社会

ホントーク〈柯隆×名越健郎〉(1)“官僚の腐敗”がバブルを拡大!?

中国不動産バブル柯隆/1100円・文春新書

 開発中のプロジェクトが次々とゴーストタウン化。中国の不動産で何が起きているのか!? 中国人エコノミストの柯隆氏が「中国不動産バブル」で中国特有の不動産事情やマネーゲーム、習近平体制の失敗などに言及。ジャーナリストの名越健郎氏が中国のリアルに迫る。

名越 帯の「GDPの3割が吹っ飛ぶ!」はショッキングでした。この10年近く中国経済は減速しているようですが、実態を教えてください。

柯隆 中国の不動産バブルは崩壊しているというのが私の認識です。ただ、これに関しては、日本の専門家の間でも意見が分かれています。

名越 否定派は、日本のバブル崩壊後、地価が5分の1程度になったけど、中国は、それほど下がっていないから、まだ崩壊とは言えないのでしょう。

柯隆 下落は最大40%程度ですが、それは政府がコントロールしているから表面化しないだけです。でも、デベロッパーの債務不履行が起きていて、建設途中で放置されている物件も急増しています。個人もローンの返済が滞る例が出ています。投げ売りしたい人もいるけれど、中国では一定の価格以下で売ることが禁じられているため、それも難しい。値段が下がらないから新規の購入希望者も現れません。完全に行き詰まっています。

名越 4年前、マレーシアのジョホールバルに行った時、中国の不動産大手のカントリー・ガーデン(碧桂園)が手がけた巨大開発計画「フォレストシティー」がゴーストタウン化しているのを見ました。同じようなことが中国のあちこちで起こっているわけですか。

柯隆 はい。特に大都市で起きています。需要を無視して作っているから当然です。

名越 日本もバブルの時に作ったテーマパークやリゾート開発が廃墟になりましたけど、中国の方が規模は大きいですね。そもそもなぜ、計画経済の中国でバブルが起きたのですか。

柯隆 ご存知のように中国は土地の私有ができません。デベロッパーは地方政府から定期借地権(70年)を買い取り、そこに建物を建てて販売して儲けるのですが、定期借地権を売ってもらうためには、官僚に賄賂を渡すしかありません。地方政府も借地権の売却収入は重要な財源だから、できるだけ高く売りたい。お互いの利害が一致してバブルが膨らんだわけです。北京で大手デベロッパーの人と食事をした時に「官僚との麻雀では一晩の掛け金が100万人民元だ」と言っていました。日本円にすると約2100万円。あれを聞いた瞬間、彼らの感覚は異常だと確信しました。

名越 「中国は人口が多く、不動産は常に不足しているから、値上がりするのは当然」という不動産神話がありましたが。

柯隆 マイホームは実需だからバブルになりにくいのですが、富裕層は値上がりを期待して合理性を欠いた価格でも投資した。それがバブルを助長しました。

名越 投資が増えたのは、中国が経済的に豊かになったからですか。

柯隆 もともと中国人は日本人と似て、貯蓄率が高いんです。違いは積極的な運用が好きなこと。だから株もやったけれど、皆、大損をしてしまった。インサイダーが多いからです。そのため、この10年で不動産に投資資金が集まったわけです。

名越 不動産バブルが崩壊すると、中国人は、もう投資を諦めているのではないですか。

柯隆 それはないでしょう。今、彼らが投資しているのが金。価格が上昇しているのも中国の主婦が買っているからだと言われています。この前、銀座の田中貴金属をのぞいたら、中国人だらけでしたよ。

ゲスト:柯隆(か・りゅう)1963年、中国・南京市生まれ。88年来日、愛知大学法経学部入学。92年、同大学卒業。94年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)、長銀総合研究所入所。98年、富士通総研経済研究所へ移籍。06年より同研究所主席研究員。18年、東京財団政策研究所に移籍、現在、同研究所主席研究員。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授を兼務。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)、「独裁者プーチン」(文春新書)など。

カテゴリー: 社会   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「元天才」西川龍馬がオリックスではまるで打てなくなった「ジェットコースター的データ」
2
新庄剛志監督「降参宣言」が出た…急失速の日本ハム「代わりの選手がいない」で戦略切り替え
3
韓国が2026W杯に出られない! アジア最終予選の異様な組み合わせと「3つの壁」
4
円安ショック!日本人男性が食いつく海外旅行先が「タイ⇒ベトナム」に急変した「ナットクな理由」
5
大森うたえもんが今だから明かす「たけし軍団」脱退の舞台裏