社会

飼えなくなった猫を手放す現場に立ち合った/ケイリン女王・高木真備の「保護ねこ生活」

 こんにちは、高木真備です!

 前回のコラムでは、保護される様々な経緯と、そこに絡む人間の問題について書きました。今回は様々な問題の中で、自分が携わっていきたい分野について考えたことを書いてみたいと思います。

 譲渡会へ話を聞きに行った時、とある団体の方が「保護される場面に立ち会ってみる?」とお声がけくださりました。この団体さんは一般家庭からの保護を主に行っていて、一般家庭で飼えなくなった犬や猫が、毎日のように施設へ持ち込まれています。

 さっそく私は指定された日に施設へ伺い、飼い主さんと手放される予定の猫を待ちました。

 少しして扉が開き、お母さんと息子さんとみられる親子、そしてキャリーに入った2匹の猫が来ました。お母さんは淡々とした様子で各手続きを済ませると「最後に会ってもいいですか」と言って撫でた後、その場で号泣。ひとしきり泣いた後、猫を置いて息子さんと帰っていきました。

 今回、手放すことになった理由は「家庭の事情で経済的に苦しくなり、お世話できなくなった」とのこと。この猫が保護された話、みなさんはどう感じたでしょうか。

 飼い主さんが帰った後に、団体さんがボソッと言った「泣きたいのは猫ちゃんの方だよ…」という言葉が、私にはとても印象的で。この場面を思い出すと、今でも胸が苦しくなります。

 飼い主さんがいなくなった後の猫ちゃんは、キャリーの中で震えていて。突然、違う環境に連れてこられた恐怖で、なかなかそこから出ることができず、2匹で固まって必死に耐えている姿を見ると心が痛くて、私も涙が出ました。

 環境の変化によるストレスで血尿や下痢が止まらず、そのまま亡くなってしまう子もいるほどの恐怖を、保護された子たちは感じています。人間同士だったら言葉で説明できることも、動物にはそれができない。なぜここに来たのかわからないからこそ、余計に怖いと思います。

 今回のような一般家庭からの保護を実際に見て、泣いていた飼い主さんも辛かったとは思いますが、「手放すのは仕方なかった」で終わらせてはいけないと、強く感じました。

 人間の都合で飼われて、人間の都合で手放される…。そして結局、辛い思いをするのは弱い立場の動物たちなんだなって。どんな理由であっても辛い思いをさせていい理由にはならないと思うので、解決していかなくてはいけない問題だと思います。

 そしてもうひとつ。途中で手放す人は動物が嫌いな人だと思っていましたが、実はその逆で、好きな人が多いことに驚きました。

 好きで飼ったけど、様々な事情で手放すことになってしまった。このパターンがとても多くて。なので動物が好きで飼った人は誰しも、手放す側になる可能性がある。私を含めて「自分は大丈夫」と思わずに、真剣に考えることが大切だと思いました。

 この後も様々な保護現場を間近で見させて頂きながら、たくさんのことを考えました。手放される場面は見ていて本当に苦しくて、毎回涙が止まらなかったです。でも自分が辛くなるからと目を逸らしてしまったら、活動を始める前の私と同じだと思ったので、この問題(一般家庭からの保護)についてもっと深く携わろうと決めました。

 こうしてようやく方向性が決まり、私が次に行動したことは「今、何ができるのか」を模索すること。次回はそれについて書いてみたいと思います!

(高木真備)

たかぎ・まきび/1994年8月17日生まれ。2014年に競輪選手としてデビューし、2021年ガールズグランプリで優勝して年間女王になる。2022年に競輪選手を引退し、その後は犬猫の保護活動に携わっている。9月23日に開催される保護犬・保護猫譲渡会(東京・京橋エドグラン/14:00~)の前に「川島なお美動物愛護賞」贈賞式があり、これに登壇予定。

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