広島ファンの「トリセツ」が、どうやら大当たりしたようだ。
今季、広島からオリックスにFA移籍した西川龍馬のバットが、大爆発している。シーズン当初はすこぶる湿っていたのに、いったいどうしたのか。
例えば9月3日の西武戦では7号2ランを含む3安打2打点で、西武撃破に大貢献。ここ5試合の安打数は4、4、2、3、1と鬼の固め打ちで、気がつけば安打数は117。リーグ4位まで急上昇している。広島時代の「天才フォルム」が、今や完全復活したといっていいだろう。
西川は広島時代の2023年、リーグ2位の打率3割5厘をマークし、赤ヘル打線を牽引。自身初のベストナインに選ばれるなど大活躍した。昨オフ、鳴り物入りでオリックスに入団したが、開幕当初からいっこうに打撃が上向かず、4月と5月は2割台前半の打率で、オリックスファンを大いに落胆させた。
6月は慣れ親しんだセ・リーグとの交流戦があったこともあり、2割8分2厘まで息を吹き返したが、7月にはまたもや数字を落としていた。
ところが夏場に入ると徐々に安打数を増やし、9月に入った途端、いきなり覚醒。9月4日までの4試合で17打数10安打、打率5割8分8厘と、驚異の数字を叩き出している。そしてこの状況は、シーズン当初に広島ファンからオリックスファンに贈られた「トリセツ」にきちんと明記されていた。
このトリセツにはいったい、何が書かれていたのか。
〈とにかくケガをしやすく、1年間フルで出場できると思うな〉
〈時々拍子抜けするほど、打席内容が悪い時がある〉
〈好不調の波があるが、最終的には成績をまとめてくる〉
〈速球、変化球どちらにも強く、センス抜群のバッター〉
こんな具合である。
オリックスファンとしては「もう少し早くから打ってくれよ」という気持でいっぱいだろうが、ようやくここにきて本来の打撃センスを見せている。広島時代は打ち出したら止まらず、「固め打ちの西川」と言われた。最も怖いのは、その後の反動による体調異変と故障だが、それもトリセツに記載済み。ベンチがあまり無理をさせないことだ。
すでにオリックスのリーグ4連覇は潰えたが、来季は西川の活躍があれば、再び優勝争いに絡むことだろう。
(ケン高田)