「エッ!?」と誰もが思った幕切れの試合後のインタビューで、勝者・井上尚弥は次のように語った。
「これを言ってしまったら見に来てくれたファンの方に申し訳ないですけど、やっていて自分としては、守備、守備に回る選手と戦って、正直楽しくはなかったです」
9月3日に東京・有明アリーナで行われた、ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ。挑戦者のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)を7回TKO勝利で下し、井上が防衛に成功したのだが、歯切れが悪いのは、不完全燃焼だったせいもあるだろう。なにしろ7回開始早々、井上の連打を受けたドヘニーは突然、腰を押さえながら井上に背を向けてヨロヨロと歩き出し、足を引きずりながら苦悶の表情で棄権を申し出たのだ。
ようやくエンジンがかかり始め、ガツンとKO勝利を狙っていた井上にとっては、不本意な結末となった。
元世界2階級制覇王者の京口紘人が試合後、自身のYouTubeチャンネル〈京口紘人Hiroto Kyoguchi〉で、この戦いを論評。井上は相手に空振りさせるのではなく、あえてガードした腕に被弾させ、そのまま相手に突進する作戦を取っていたと振り返った。
「ドヘニーにとったら、ガチーン当ててんのにブレへんから、ごっつい大きいものを叩いてるイメージかな。壁と向かい合ってるじゃないけど、そういう錯覚に陥ってるっていうのもあるんじゃないかなと思うくらい、(井上の)体幹強かったし。(中略)ガチーンってなった衝撃で腰を痛めた、みたいな…」
腰の神経をやられた、いやギックリ腰になった…など棄権の原因についての見解が出ているが、いずれにしても井上のパンチの衝撃によるものなのだろう。
試合後の井上のインタビューに話を戻そう。今回、計量後に過去最高の7.4キロ増で試合に臨んだことに対しては、
「今回は意図的に、増やせるだけ増やしてみようというか、自分のボクシングスキルが落ちない程度にどこまでリカバリーできるかというのを、ちょっと試してみましたけど」
スーパーバンタム級にもはや敵なしと言われる井上。フェザー級に階級を上げても視界良好のように見える。
(所ひで/ユーチューブライター)