阪神は9月4日に甲子園球場で行われた中日戦を9-4で快勝。首位を争う広島と巨人がともに連敗したことで、首位・広島とのゲーム差は3.5に。途中経過でスタンドが沸くなど、ファンが色めき立ったことは言うまでもない。
そう、アレンパへの希望が見えてきたのだ。
試合は阪神の先発・村上頌樹が1回表、佐藤輝明の悪送球などで二死二、三塁のピンチを迎えると、踏ん張りきれずに宇佐美慎吾に先制2点タイムリーを浴びる嫌な流れのスタートとなった。
ところがこの日の阪神は、反発力がひと味違ったのだ。
すぐ裏の攻撃で、近本光司の17試合連続安打、中野拓夢が続き、森下翔太が同点タイムリー二塁打、大山悠輔も二塁打で続き、さらにエラーで村上の足を引っ張った佐藤輝明がセンター前ヒットで2点を追加した。
そして締めは、井上広大の甲子園初となる2ランホームランだ。
実はこの井上について、岡田彰布監督は先発起用を決めた前日の試合での打席を振り返っている。
3日の中日戦、3-0と阪神リードで迎えた8回裏、一死一塁の場面で代打として登場した井上は、相手投手の橋本侑樹のストレートを2球空振りした後、3球目でライトフライを放った(細川成也の落球で出塁)。
この場面について、岡田監督は「自分の感じで遅れているいうの修正して。あの打席がなかったら今日は使わなかったけどな」と、翌日の先発起用を決断していたのだ。この大事な時期に「岡田の勘」が冴えを取り戻してきたのは心強いといえる。
野球解説者の西山秀二氏は、セの上位3球団で「余力があるのは阪神」と評しているが、その理由として西山氏はデイリースポーツのコラムで「阪神は攻撃において、今シーズンずっと『こんなはずじゃない、もっとできる』とチーム内外ともに思いながらここまで来た。ようやく、本来の姿を取り戻したように感じる」と、チームの伸びしろを指摘した。
また、首位の広島については「投手が踏ん張り、打線が何とか得点して、という目一杯の戦い」とチーム状態はギリギリだと話し、2位の巨人は「若手に経験を積ませながら、ベテランとうまくかみ合って白星が先行していた」と今以上の伸びはないとし、両チームへ警鐘を鳴らしたのだ。在阪スポーツ紙デスクがこれに頷く。
「阪神は近本、森下、大山、佐藤の4人がセ・リーグの得点圏打率上位を独占と、チャンスで確実にランナーをホームに帰す信頼度が高い選手が揃っている。この他にも〝満塁男〟木浪聖也が好調をキープなど、打線は現在が今シーズン一番の調子と言えます。10日から16日まで7連戦がありますが、すべて甲子園の試合であるというのが好材料。ここまで甲子園では6割3分3厘と高勝率ですし、現在は先発陣にローテの谷間が存在しない。7連戦も青柳晃洋、村上頌樹、高橋遥人、大竹耕太郎、ビーズリー、才木浩人、西勇輝という、他球団が羨む豪華先発陣で臨むことができる。投打がガッチリかみ合った阪神が一気に首位に躍り出ても不思議ではない」
昨年は9月に11連勝で一気に優勝を決めた阪神。現状のムードはあの時に近づきつつあるようだ。ということは「アレンパ」の完全復活か。
(石見剣)