ロシアによるウクライナ侵攻が開始されてから、2年半余りが過ぎた。最近はウクライナ軍によるロシア領内への進撃が激しさを増しているが、この間にはウクライナ兵捕虜とロシア兵捕虜の交換が50回以上にわたって行われてきた。
そんな中、あらためて浮き彫りにされているのが、ウクライナ兵捕虜に対するロシア軍の「残虐拷問」の凄絶実態である。
捕虜交換で命からがら帰還を果たした多くのウクライナ兵からは、こんな「生々しい報告」があった。
「ロシア軍による拷問は例外なく行われていた」
「朝夕に廊下に呼び出され、金属棒で激しく殴られた」
「床を引きずり回されたあげく、全裸で建物内を走らされた」
「腐った肉のスープを飲まされ、捕虜全員が嘔吐や下痢に苦しんだ」
「シャワーの時間に濡れた体への電気ショック拷問が繰り返された」
なんとも筆舌に尽くしがたい恐怖証言が飛び出しているのだ。
しかも濡れた体への電気ショック拷問の際、激痛のあまり絶叫するウクライナ兵の姿を見て、ロシアの刑務官らは大きな笑い声を上げて喜んでいたという。たび重なる拷問によって死に追い込まれた捕虜は少なくなかったというから、まさに狂気の沙汰である。
しかし、これらの残虐行為は氷山の一角にすぎない。例えば20歳代の若いウクライナ兵捕虜(男性)に対して、およそ人間の所業とは思えない戦慄の拷問と処刑が行われていた、との報告が存在するのだ。その内容を要約すると、以下の通りとなる。
〈「Z(ロシア軍を示す記号)」のバッジが付いた軍服を着たロシア兵が、ウクライナ兵捕虜の手足を縛り、口に猿ぐつわをはめた。四つん這いにさせられたウクライナ兵捕虜が暴れ出すと、ロシア兵は頭などを足で蹴って捕虜の精神をズタズタにした。その後、ロシア兵はやおら手術用のゴム手袋を両手にはめると、カッターナイフで生身の捕虜の睾丸を切り落とした。さらに去勢後の睾丸を捕虜の口に咥えさせるや、恐怖と激痛に悶絶する捕虜の頭を銃で撃ち抜いて処刑し、遺体を引きずり回して見せしめとした〉
それだけではない。一連の蛮行は映像に収められ、SNS上で公開されたというから、まさに悪魔の所業を通り越している。
言うまでもなく、これらの残虐行為は捕虜に対する人道的処遇などを定めたジュネーブ条約に違反する犯罪行為である。
(石森巌)