9月12日に告示された自民党総裁選(9月27日投開票)は「小泉進次郎元環境相と石破茂元幹事長による決選投票となり、小泉氏が当選する可能性が高い」との見方が多い。小泉氏の知名度は抜群ではあるものの、「進次郎構文」と揶揄されるように、発言が不安視されていた。候補者乱立の恩恵を受けているようだ。
自民党幹部によると、選挙戦の公平性を期すため、記者会見やテレビ出演は横並びになった。つまり9人の候補者を平等に扱わなくてはならないため、小泉氏にのみ焦点が当てられることがなくなったというわけだ。
さらに他の候補者が、次期総裁になる可能性が高いとみられている小泉氏に集中砲火を浴びせる可能性は低い。小泉氏には後ろ盾として、菅義偉前首相がついている。人事などで報復されるかもしれないのに、あえてリスクを冒してまで小泉攻撃をすることはないだろう、というわけだ。
「せいぜい高市早苗経済安全保障担当相が選択的夫婦別姓問題で、旧姓でも不動産登記できるのに『登記できない』と主張した小泉氏を皮肉るぐらいでしょう」(自民党幹部)
この党幹部はさらに、こんな不穏な工作にまつわる話を繰り出した。
「菅さんらは選挙期間が長くなった総裁選中に小泉氏を目立たせないようにするため、候補者乱立を後押ししたのではないか、という憶測すら出ている」
過去の総裁選を振り返れば、2012年に石原伸晃元幹事長が東京電力福島第1原発事故で汚染された土壌について「運ぶところは福島原発第1サティアンしかない」と述べ、批判を浴びて急失速した。
小泉氏は以前より受け答えが上手くなっている。9月6日の出馬会見では、フリージャーナリストから、
「小泉さんがこの先、首相になってG7(先進7カ国首脳会議)に出席されたら、知的レベルの低さで恥をかくのではないかと、皆さん心配しております」
そんな指摘をされながらも、次のように切り返した。
「私に足りないところが多くあるのは事実だと思います。完璧ではないことも事実です。しかし、その足りないところを補ってくれるチーム、最高のチームを作ります」
小泉氏が油断さえしなければ、憲政史上最年少の首相が誕生することになりそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)