2002年以来のサッカーワールドカップ(W杯)出場を目指す中国代表は、約2週間の強化合宿を行い、26年の北中米W杯アジア最終予選に向けて万全の準備を整えたが、かなり厳しい船出となった。
日本との開幕戦には0-7で惨敗したが、心機一転、続くホームでのサウジアラビア戦は相手のオウンゴールで先制点奪取に成功する。
さらに、サウジアラビアのMFモハメド・カンノがラフプレーで一発退場し、数的優位で試合を進めることになったが、前半39分に同点に追いつかれると、後半アディショナルタイムにヘディングシュートを決められ、悪夢の2連敗スタートになってしまったのだ。
2試合で勝ち点「0」得失点差「-8」の断然最下位に、怒りの矛先は当然のように2月に就任したブランコ・イヴァンコビッチ監督に向けられた。サッカー記者が苦い表情で話す。
「これまでの成績は1勝3敗2分と厳しく、この監督では勝てる気がしないという意見が大勢を占めている。特にサウジアラビア戦は10人の相手に逆転負けしたことで、試合後の記者会見で、監督に向かって『退任しないのか?』と記者から直球の質問が飛ぶと大きな拍手が起きて、これが一番の盛り上がりを見せたという状態です。とはいえ、アジアのトップレベルで戦えるほど戦力が充実しているわけではなく、すぐに中国代表を引き受けてくれる監督がいないのも現状なのです」
トップとの差を埋めるため、これまで中国サッカー協会は、代表チームの〝補強〟に乗り出し、「帰化政策」に取り組んできた。
実際に日本との試合では、FWフェイ・ナンドゥオ(ブラジル)ら3人が来日メンバーに入っていたが、試合結果を見ればうまくいっていないのは一目瞭然だろう。
アジア最終予選の3位・4位に入れば、プレーオフ経由で本大会出場の望みがつながるのだが、今後も苦戦必至の戦いが続くことが予想される。
そんないきなり崖っぷちに追い込まれた中国代表の惨状に頭を抱えているのはむしろ、同国のサッカー協会やサポーターではなく、国際サッカー連盟(FIFA)関係者ではないかと、前出のサッカー記者がW杯の背景を軸に指摘する。
「そもそも今大会から大幅に出場枠が拡大したのは、競技普及だけが目的ではありません。中国やインドなど経済的に潤っている国が本大会に出場すれば、巨大なビジネス展開が期待できるから。前回大会の22年カタールW杯の広告を見ても、電光掲示板には『蒙牛』など漢字が目立ちました。FIFAと契約を結んだスポンサーで、中国企業は国別で最多の4社。広告など14億ドル(約1900億円)の資金を投じたと言われています。これで中国が本大会に出場するとなれば、さらなる莫大なチャイナマネーが動くわけです。ところが現実を突きつけられて、FIFAは『アテが外れた』とイライラが爆発していることでしょう」
中国は大会出場どころか、最終的にはW杯の自国開催をしたくてウズウズしている。しかし、すべてが絵に描いた餅になりかねない現状では、まずはアジア最終予選での「1勝」が中国のリアルな目標だろう。
(風吹啓太)