横綱不在で見どころの少ない大相撲9月場所。それでも、ひときわ注目を集める力士がいる。新入幕の白熊(25)だ。可愛らしい四股名に加えて、愛嬌たっぷりのベビーフェイス。その容貌は、ついつい「放っておけない」と思わせるほどだ。が、光が強ければ影もまた濃いようで‥‥。
その人気は決して見た目だけではない。初日を白星で飾ったことからもわかるように実力もピカイチなのだ。初日の取組を角界関係者が振り返る。
「先場所、土をつけられた北の若(23)を危なげなく寄り切りました。アマチュア時代から安定感のある四つ相撲が持ち味。自分の型にハマれば、相手をそのまま土俵外まで運んでしまう。鍛え抜かれた腕や肩回りの馬力はすでに三役クラスとの評判です」
先場所の十両優勝はダテではなかった。実際、白熊は22年に学生相撲の名門・日本体育大学から二所ノ関部屋に入門するや、前相撲からわずか8場所で関取に昇進した〝エリート力士〟だ。24年1月場所から四股名を本名の「高橋」から「白熊」に改名したのも、周囲の期待の表れである。
「師匠の二所ノ関親方(38)=元横綱・稀勢の里=が名づけ親です。色白で筋肉質な体が由来と言われますが、『北海の白熊』と称された元大関の北天佑のような相撲を目指すという意味が込められているそうです」(前出・角界関係者)
この改名が奏功する。一躍、知名度を上げることになり、動物園でしか見ることがない珍獣と同じということで、歓声が一気に増えたのだ。
「それでいて、白熊も出待ちファンに丁寧に対応するので両国国技館からタクシー乗り場まで30〜40分かけるのはザラ。付き人も呆れながら待たされていますよ」(前出・角界関係者)
白熊本人も調子に乗ったのか、「我が世の春」を謳歌し始めているようで、
「あらゆるところで、相撲ファンの女性からの〝お誘い〟が増えたようです。土俵外ではメガネをかけて、ロボコップの愛称で親しまれた東関親方(48)=元小結・高見盛=を彷彿させる生真面目な印象もありますが、白熊はプライベートでも『電車道』よろしくイケイケなタイプなんだとか。悪い虫が寄ってこないかと周囲をヤキモキさせていますよ」(角界OB)
また、白熊は〝大先輩〟から不興を買っているという。同部屋で先場所幕内優勝した大の里(24)は同じ高校と大学の1学年後輩。ともに大学相撲部で主将を歴任した2人なのだが、
「今年5月に二所ノ関部屋から独立した中村親方(42)=元関脇・嘉風=と〝合口〟がよろしくない。2人とも日体大の先輩で部屋付き親方だった中村親方の手引きで二所ノ関部屋に入門しているのに、独立について行かずに袂を分かった。なかば〝内弟子〟のような存在だったようですが、元横綱が運営する二所ノ関部屋の居心地のよさを理由に残留。特別に契約書を交わしていたわけでもなかったので、2人を縛る強制力もない。結局、中村親方が泣きを見ることになりました」(前出・角界OB)
愛くるしい外見からは、なかなか伝わってこないリアリストぶり。どうりで出世が早いわけだ。