いよいよ「50-50」到達への秒読み段階に入った。ドジャース・大谷翔平がマーリンズ戦(9月17日)でライトスタンドに放った今季48本目はメジャー通算219号で、韓国出身のチュ・シンス(秋信守)を抜いて、アジア出身選手としては最多本塁打記録を更新。ドジャースではショーン・グリーンが2001年に記録した球団記録の49本に、あと1本と迫った。だが試合後の大谷からは、意外な言葉が返ってきた。
「もう今日のことは忘れるのがいちばんかな、とは思います」
こんな発言が出たのは、大谷の選球眼とこの日の球審のストライクゾーンに「色」がついていたからだという。記者とのやり取りで出た大谷の発言を、おさらいしてみよう。
「(本塁打を打った球は)難しい球でしたけど、しっかりそこ打てたというのはよかったですし、どちらかというと、今日はやっぱり自分のゾーンをなかなかこう、信じ切れていなかったかなと思うので、そこ次第かなと思います」
「自分がボールだって判断した投球でストライクを取られた時に、そこを捨てるべきかどうなのかという判断で、今日はどちらかというと、アンパイアに合わせていた打席がちょっと多かったかなと思います」
「ボールの見え方はいいですかね。基本的には振るべきボールに対して反応はできていると思うので。そこを自分で信じているかどうかがゾーンを維持する上では大事なので、もう今日のことは忘れるのがいちばんかなとは思います」
「(迷いがあったか、と問われて)んー、迷いというか、なんですかね。短期的に見たらやっぱり審判の色というのも理解しないといけないですし、そこに合わせにいくというのも大事ですし」
最後は自分自身に言い聞かせるように、気持ちを切り替えていたが、大谷の打席での「誤審」は、9月に入って相次いでいる。とりわけ酷かったのは、9月2日のダイヤモンドバックス戦。11-4で迎えた9回表のドジャースの攻撃、二死走者なしの場面で、大谷が打席に立った。カウント2-2からの6球目、外角低めに外れた変化球を見送ったところ、球審の判定は「ストライク」。
コールの瞬間に大谷は目を見開き、一瞬フリーズする。首をかしげ、苦笑いを浮かべてベンチへと引き上げた。ドジャースが大差をつけている試合を早く終わらせたかったのか、大谷への嫌がらせなのか、真意は球審本人にしかわからないが、残りわずかな試合でこうした「誤審」が続発すれば、大谷の「50-50」達成の妨害ブレーキになりかねない。
高校時代に書いた「ドラフト1位8球団」の夢を叶えるマンダラチャートの中で、自身の「運」を上げる手段として「審判さんへの態度」を挙げていた大谷少年。渡米後もあまりに酷い誤審に声を荒らげる抗議などしてこなかったのも、自分の「運」を上げるためだろう。
はたしてメジャーの「クセつよ審判団」に、大谷の「誠意」は通じるだろうか。
(那須優子)