当然と言えば当然だ。ファンが「漫画みたいだ」と投稿すれば、ロバーツ監督が「人間じゃない」と唸るほど、この1週間で規格外の活躍を見せたドジャースの大谷翔平が9月23日、今シーズン3度目、自身メジャー通算では10度目となる、ナショナル・リーグの週間MVPを受賞した。
とにかく成績が凄まじかったことは今さら言うまでもないが、7試合で32打数16安打で打率5割ちょうど、ホームラン6本、打点17、盗塁7を記録したのだ。
しかし、この週間成績を聞き「打率5割?」と疑問を感じてしまった人が多数いたようだ。その理由を野球記者が説明する。
「週間MVPは17日のブレーブス戦からカウントされています。ところがこの日のほか、18、19日のマーリンズ戦の3日間は合計で14打数2安打で打率1割4分3厘、ホームラン1本、3打点、1盗塁なんです。『50-50』を決めた20日のマーリンズ戦の6打数6安打3ホームラン10打点2盗塁のインパクトがあまりに強烈だったことと、その後の3日間も打ちまくったことから『もっと打っているのではないか』というイメージが残ってしまったようですね」
確かに週後半の〝打ちまくった〟4日間の数字だけ抽出すると、18打数14安打で打率7割7分8厘、ホームラン5本、打点14、4盗塁となる。この凄まじく人間離れした数字に、SNS上で「漫画を超越している」という声が乱れ飛んだのだ。
実は、大谷がいかに打っているかのイメージで比較された、ある有名「漫画」の主人公がいるという。スポーツライターが「まさかこんな比較まで出るとは」と驚きの表情で語る。
「水島新司氏の代表作『ドカベン』の山田太郎です。山田太郎の凡退を見たことがあるファンはいません。常に打っているイメージしかない。そうしたことがあり、打ちまくった4日間の大谷を『山田太郎を超えた』と表現する人が多かった。というのも、実は山田太郎の甲子園での打率や本塁打数を計算しているマニアがいます。それによると、山田太郎は明訓高校時代に出場した甲子園球場で、132打数99安打51打点20本塁打で打率7割5分となっています。ところが今回の4日間の大谷は、打率で甲子園の山田太郎を抜いているんですよね。そして打点や本塁打のパーセンテージまで大谷の方が上です。つまり、かつての野球少年たちにとって史上最強の打者は山田太郎でしたが、大谷翔平の瞬間最大風速はそれをも凌駕したというわけです」
もちろん、あくまで4日間の出来事だったとはいえ、山田太郎を超える打者がMLBの日本人選手として現れるとは、作者の水島新司氏が一番、天国で驚いているかもしれない。
(田村元希)