9月最終週、と同時に秋のGⅠシーズンの幕開けだ。
今週末の中央競馬のメインは、29日に中山競馬場で行われるGⅠレース「スプリンターズS」だが、前日の土曜日、28日にしれっと行われる地味ぃ~なダート重賞「シリウスS」で翌日の勝負用資金を大幅増量できるチャンスがあるのだ。
シリウスSと聞いて、日程、開催競馬場、距離、条件など、すべて即答できる人は相当な競馬通だろう。答えはスプリンターズSの前日の土曜日、阪神競馬場のダート2000メートルで行われるハンデ戦。ところが、今年は阪神競馬場改修工事のため、中京競馬場の1900メートルで開催される。この時点で頭がこんがらがって「当たりそうにないな~」と及び腰になる馬券ファンがいるかもしれない。
しかも、今年の同レースは前走でオープンの三宮ステークス圧勝のオメガギネス、中京ダートで5戦すべて3着以内、1900メートルで3戦2着3回というハピ、昨年の同レース覇者ハギノアレグリアスの3強で堅いという下馬評がある。
しかし、この下馬評をあっさり笑い飛ばすのが関東在住の馬券師ライターT氏だ。どうやら無理やり笑っているわけではない。
「このレースは20~22年に京都競馬場改修工事の影響で中京1900メートルで行われている。だから、この3年は参考になる。調べると中京と京都にしかない1900メートルで実績のない馬は馬券から消えてますね。これがまず1つ。あとはハンデ戦ということがデカい。今回の3強を見てください。一体、斤量は何キロですか?」
改めて確認すると思わず「あっ!」と声が出るはずだ。トップハンデは昨年の覇者、ハギノの59.5キロ、2番目が1番人気確実のオメガの59キロ、3番目がハピの58キロ。これにT氏はあきれ顔だ。
「ハンデ1位~3位の3頭で決まるハンデ重賞なんてほとんど聞いたことがない。しかも今回の上位3頭の斤量合計は176.5キロ。この10年、シリウスSの上位3頭の斤量の合計最大値は171キロ。つまり1頭平均は57キロ。今回は全体的に重ハンデが多いが、それでも一気に5.5キロも増えるわけがない」
確かにこれは説得力がある。過去の同レースで3着以内に入線した馬の最大斤量は58.5キロ。この時点でハギノとオメガはすでにオーバーしている。T氏が続ける。
「ハギノは昨年の覇者とはいえ、それは阪神2000メートルでのこと。これでトップハンデは『買うな』と教えてくれているようなもの。オメガは斤量的には明らかに過大評価。しかも、このレースは3カ月以上の休み明けで出走した馬たちが凡走を繰り返している。つまり、夏に使われてこのレースがピークになる馬が好走しているということ。3カ月半ぶりのオメガは買っても押さえまででしょう。ならば、3強で太く買えるのはハピだけになる」
ハピが本命として、残るはやはり1900メートルの実績馬から選ぶことになるのだろうか。しかし、T氏は意外な点からわき役ホースたちを選ぶという。
「中京の3年間で必ず馬券になっているのは、同じ左回りの新潟で行われたBSN杯からの臨戦馬。他の年に絡んでいる馬もいるが、その場合は上位人気の馬だけ。中京開催だけはそれが無関係です。今回でいえば、ヴァンヤールとビヨンドザファーザーがBSN杯組。斤量から考えると57.5キロのビヨンドより、57キロのヴァンヤールの方が人気も低いし買いたいですね。あと1頭、ロコポルティ。中京1900で1戦1勝。57キロの平均好走斤量ならオメガと同等扱いでいい」
T氏によれば、今年は最多合計斤量の更新は間違いなさそうということだが、それでも「5.5キロ増はありえない。せいぜい3キロまでだろう」と笑うのだった。
合計斤量という意外な見方からの馬券戦略で、28日の土曜日はスプリンターズSの資金を増やそうではないか。
(宮村仁)