まさに歴史的ともいえる急失速で、ついにはスタンドに閑古鳥が鳴く始末…といえば、セ・リーグの優勝争いから一気に消えた広島カープの惨状である。
一時はクライマックスシリーズでの逆転日本シリーズ出場に希望を見い出していたファンも、今では「無理に出場しなくてもいい」とトーンはダダ下がりだ。
そしてファンの関心は既に来季へと向けられており、「戦力補強」が話題の中心になっている。36歳の秋山翔吾の後継者としてにわかに浮上しているのが、今季、国内フリーエージェント(FA)権の資格取得条件を満たした、DeNAの佐野恵太だ。
佐野は昨年の契約交渉の場で、球団から提示された複数年契約を固辞。1500万円ダウンの年俸1億5500万円で単年契約を選択した。今季は本塁打こそ前年の13本から減らしているが、打率は2割7分3厘(9月26日時点)とまずまずの数字を残しており、貧打にあえぐ広島ならば、シーズンを通して主軸を任されるはずだ。
広島はこれまで「育成」を中心にしたチーム作りをしており、FA選手を獲得したのは秋山が初めて。もし佐野を獲得すれば同一リーグからとなり、地元が大騒ぎになるのは間違いないだろう。
そもそもDeNAは桑原将志、蝦名達夫、関根大気、度会隆輝、梶原昂希など外野の選手層が厚く、若手の育成を考えると、佐野の出番はいずれ減っていくことが考えられる。安定的な出場機会を求めて他チームに活路を見い出す、そんな可能性は否定できない。
野球評論家の高木豊氏は「広島だったらものすごく重宝されるよ」と太鼓判を押しており、広島ファンのテンションは日に日に高まっている。
ここで他チームの補強ポイントを分析すると、ライバルは多いと言わざるをえない。長打力不足と外国人依存からの脱却を目指している中日や、左の長打力と外野手の若返りを求める巨人などが佐野に興味を示しているといわれており、FA権を行使すれば争奪戦になるのは必至だ。
広島は今季、外国人野手がほぼ全滅。あと一本に泣いた試合は数知れない。中日・ビシエドの獲得が囁かれる中、地元・広陵高校出身の佐野は、まさに喉から手が出るほど欲しい選手だろう。
(ケン高田)