プロ野球において、打者の「粘り」ははたして、どこまで許容されるのだろうか。今季ブレイクした広島カープの矢野雅哉の打席を見て、ふと思った。
それは9月22日、バンテリンドームで行われた中日戦の第3打席。相手投手の涌井秀章に22球を投げさせ、N1打席での最多投球数の記録を更新したのだ。矢野は追い込まれてから8連続でファウルし、最後は148キロのストレートを見逃して四球を勝ち取った。
同日放送の「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)では、矢野の新記録が取り上げられた。野球解説者の高木豊氏は、Aクラス入りを懸けて必死に戦う矢野の姿を称賛した。
「こういう打席を見せてくれのは、本当に好感が持てる。矢野が広島の中心選手になったら強くなるだろうな」
一方では、矢野の粘りを快く思っていない人物もいる。日米両球界で活躍した野球評論家の上原浩治氏は9月29日の「サンデーモーニング」(TBS系)に出演すると、まさかの「喝!」を入れたのだ。
「もういい加減にしてくれ、そういう気持ちです、はい。もう早く前に飛ばせと、そういう気持ちです」
冗談めかして笑う上原氏だったが、面白くないのは広島ファンだ。なんとしてでも塁に出ようとする矢野の姿を認めるどころか、反対に「喝!」を入れられては、腹が立つのは当然。「お互い真剣勝負なんだから水を差すな」「むしろ最後まで勝負した涌井に『あっぱれ』だろ」などと、非難の声が相次いだ。
「カット打法」といえば、日本ハム・中島卓也が思い出されるが、その驚異の粘りには否定的な意見がある一方で、「プロ同士ならば打ち取ればいい」という声は大きかった。
矢野が将来、首位打者争いをするような選手に成長したら、上原氏は気持ちよく「あっぱれ!」を与えてくれるだろう。
(ケン高田)