サッカー日本代表キャプテンの遠藤航が、2シーズン目を迎えた名門リバプールで苦しんでいる。
昨夏、リバプールに移籍し、チームの中心として公式戦43試合に出場した。しかし今季はユルゲン・クロップ前監督が退任し、新たにアルネ・スロット監督が就任すると、出場機会は激減する。
唯一、先発出場したのはカラバオ・カップ3回戦のウェストハム戦のみ。リーグ戦は第2節のブレントフォード戦で、アディショナルタイムに2分出場しただけ。過密日程の中で行われたUEFAチャンピオンズリーグのACミラン戦でも、アディショナルタイム4分の出場にとどまった。昨季に比べて遠藤の序列は確実に下がっている。
その理由は明確。遠藤はスロット新監督のアンカー(1枚ボランチ)像に合わないからだ。
スロット監督が今夏獲得に動いたボランチは、スペイン代表でレアル・ソシエダに所属する久保建英の同僚でもある、マルティン・スビメンディだった。スビメンディのプレースタイルは極端に言えば、遠藤とは180度違う。
遠藤は「デュエル王」と言われるように、ボール奪取能力と球際の激しさで勝負するタイプ。いわゆる「潰し屋」のようなプレーを得意とする。一方、スビメンディにフィジカル的な強さはないが、パスカットが得意でボールを前に運べる。精度の高いパスでゲームを作れるし、展開力もある。スロット監督は後者のタイプを必要としていた。
ところがリバプールは、スビメンディ獲得に失敗した。開幕戦で誰が先発するのか注目されたが、先発で使われたのは遠藤ではなく、スビメンディのプレーに近い22歳のライアン・フラーフェンベルフだった。
この起用法を見ても、スロット監督が遠藤のようなタイプのボランチを求めていないことがわかる。ケガ人が続出するか、監督が成績不振で解任でもされないと、遠藤の先発出場はないのか。チームは現在、首位争いを繰り広げており、結果が出ているうちは、先発を大きく変えることはない。
しかもここにきて、スビメンディ獲得に失敗したことで、今冬の移籍期間で新たにボランチの選手を補強するのでは、といわれている。補強に成功すれば、ベンチスタートの遠藤がベンチ外になってもおかしくはない。
では、遠藤はどうすればいいのか。ひとつはスロット監督の信頼を得て、出場試合を増やすこと。これからの10月、11月でどこまで信頼関係を築き、12月にどれだけ試合に出場できるか。それができなければ今冬の移籍期間に新天地を求めて移籍するか、今シーズン終了後の来夏に移籍するか。
日本代表への影響は、それほど大きくはない。森保一監督と遠藤の信頼関係を考えれば、たとえクラブでの出場機会が減っても、代表に招集するはずだ。ただ、それはW杯アジア最終予選までの話であり、それ以降どうなるかはわからない。
来年6月まである最終予選でW杯出場が決まれば、本大会まで1年の準備期間がある。当然、メンバーの入れ替えが考えられ、所属クラブで試合に出場していない選手がメンバーから外れてもおかしくない。それが遠藤であっても不思議ではないのだ。
まずは遠藤が年内にどういう決断をするか、注視したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。