事件

綾瀬「女子高生コンクリ詰め殺人」の全真相を再検証(1)「犯人を殺してやりたい」

 8月末、SNSで「綾瀬コンクリート詰め殺人」が突如トレンド入りした。事件発覚から35年が経った今も人々の関心を集め続ける戦後最悪の凶悪事件。なぜ罪なき女子高生が約40日間も監禁され、惨殺されたのか。裁判記録から犯行の残虐性を再検証するとともに、鬼畜たちの〝その後〟を追った。

「捜査に関わった警察官たちは異動や退職などで散り散りになっていますが、誰一人として事件のことを忘れた者はいないでしょう。戦後の事件史を振り返っても、ここまで残虐な事件は他に例がない。取り調べにあたった検事の一人はのちに『犯人を殺してやりたい』と語っていたほど。被害者の女子高生の恐怖や無念を思うと、怒りがこみあげてきます」

 元警視庁刑事で犯罪心理学者の北芝健氏がこう語るように、凄惨な事件の記憶が消えることはない。

 東京都足立区綾瀬で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件。88年11月に埼玉県三郷市で拉致された女子高生(当時17歳)が、不良少年グループのメンバーの自宅2階で約40日間にわたって監禁され、性暴力や激しい暴行の末に命を落とした。死体はコンクリート詰めにされ、元号が平成に変わる直前の89年(昭和64年)1月5日に遺棄されたことから「昭和最後の凶悪犯罪」とも言われている。

 事件には監禁部屋に出入りしていた不良少年グループのメンバー10人以上が関与していたが、いずれも未成年だった。結局、家庭裁判所による「刑事処分相当」との判断で刑事裁判を受けたのは4名。被害少女を絶命に至らしめた1月4日の「最後の暴行」に加わったことで、殺人、わいせつ目的略取・誘拐、監禁、強姦等の容疑で起訴されたのだ。ここに少年(当時)4名のプロフィールを記す。

●A 70年生まれ。逮捕当時18歳。柔道で私立高校に推薦入学したが、1年生3学期で中退。事件の主犯格とされ、一審の判決は懲役17年(求刑は無期懲役)、二審で懲役20年の判決。出所後の13年に詐欺容疑で逮捕。

●B 71年生まれ。サブリーダー格。小学生の時に両親が離婚。スナックを営む母親に育てられた。一審、控訴審で懲役5年以上10年以下の不定期刑が確定。出所後の04年6月に監禁致傷の容疑で逮捕される。

●C 72年生まれ。父は病院に事務長として勤務、母は同じ病院の看護師。綾瀬の自宅2階の自室が監禁部屋となる。懲役5年以上9年以下の不定期刑が確定。

●D 71年生まれ。5歳の時に両親が別居し、後に離婚。母はスーパー勤務。高校中退後はウエーターなど職を転々としていた。二審で懲役5年以上7年以下の不定期刑。

 89年10月に行われた第5回公判では、Aが被害少女にジッポオイルをかけて火をつけていたことが明らかになった。証言台に立ったCは当時の心境を聞かれ、

「被害者が熱がって、その姿が面白かった。A先輩が『笑え』と言ったり、変なマネをさせたりしたんで、何か、そういうのが面白くなって‥‥」

 と述べている。4名の犯人に実刑を言い渡した判決文には、被害少女の状況がこう記されている。

《一月四日早朝、被告人らから暴行を受ける直前の同女が、それ以前に受けた度重なる強度の暴行等により、顔面は頰が鼻の高さに並び、目が判別できないほど腫れあがり、脚の部分などの多数か所にできた火傷が治る暇なく化膿して異臭を放ち、ぐったり仰臥していたという状態》

 鬼畜の所業と言う他ないが、4人の犯人は実名を伏せられたまま、それぞれの刑期を終えていった。

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