石破茂首相による、山口県長門市にある安倍晋三元首相の墓参が検討されている。東国原英夫氏が石破内閣を「安倍憎し内閣」と評するなど、首相と旧安倍派との関係悪化が際立つ中、この墓参は関係を修復するための布石となる。だが、理由はそれだけではない。「祟られる」ことを危惧しているのだ。首相周辺は、
「墓参をすれば祟られることもないだろう。縁起が悪いことは少しでも回避したい」
とこぼしているという。
高市早苗氏を支援した自民党保守派には、安倍氏を「神」と考える人が多い。日本には古来より「御霊信仰」がある。天災や疫病の発生は、非業の死を遂げた人の「怨霊」に起因する、という考え方だ。
平安時代に非業の死を遂げた菅原道真、平将門が災い起こしたと考えられ、恭しく祀られたことは歴史の教科書にも出ているようなことだが、保守派の一部は、暗殺された安倍氏の霊が「日本を守っている」と考えている。いや、そこまで極端ではなくとも、日本の未来のためには「安倍氏の遺志を継ぐことが最低条件」という雰囲気は、保守派の大部分に漂っている。
かつて安倍氏を「国賊」と断じた村上誠一郎氏が総務相で入閣するなど、「反安倍」の姿勢を見せる石破内閣に対し、保守派は「安倍氏の霊に祟られて、石破政権は短命政権に終わる」と考えている。そこで墓参なのだ。首相周辺は「せめて祟りから逃れたい」と考えた。
現職首相が歴代首相の墓参りをするのは常識的なことだ。問題なのは、へそ曲がりな石破首相。合理的に「祟りなどありえない」として「フン」と鼻であざ笑う可能性を、首相周辺は恐れているという。
(健田ミナミ)