「意外に知られていないことだが、安倍さんと小池さんは93年の総選挙で初当選を果たした同期組。政治的な思想や信条もいわゆる『右寄りのタカ派保守』で、政界では少数派ゆえに、同志としての結びつきは今なお変わらず強い。事実、小泉(純一郎)内閣で安倍さんは幹事長や官房長官を務め、小池さんも環境相に就任して名を上げたが、その後、小池さんは第一次安倍内閣で国家安全保障問題担当の総理補佐官、さらには初の女性防衛相にも抜擢されている。所属する党は変わっても、二人の関係は蜜月なんだよ」
こう指摘するのは、自民党本部に籍を置く古参の幹部だが、その小池氏と安倍総理の蜜月関係にヒビが入ったのは、下野時代の12年に行われた自民党総裁選だったとされている。
この時、安倍氏の対抗馬として名乗りを上げた石破茂氏(60)を支持した小池氏はその後、政権奪還後の安倍政権下で主要ポストに就くことはなかった。そして、冷や飯を食わされ続けた小池氏が安倍自民に反旗を翻す形で昨年7月の都知事選に電撃出馬した、というのが大方の見立てだった。だが、この古参幹部によれば、小池氏と安倍総理は12年の総裁選以降も「闇の同志」として、秘かに通じ合っていたというのだ。
「安倍さんは政界では広く知られた電話魔で、小池さんとも専用のホットラインがある。安倍自民との激闘を展開した都知事選や都議選のさなかにも、二人はホットラインで連絡を取り合っていた。日本の首都を率いる都知事の権限は総理に次ぐ強大さを誇っており、表向きは激闘を演じながら総理と都知事の両ポストを闇の同志でガッチリと押さえ込む、という了解が暗黙裡に交わされていた。自民党都連や都議会自民党はそこを完全に読み誤り、小池憎しで突っ走って、墓穴を掘ってしまったんだよ」
そして、今回の総選挙でも、安倍総理と小池氏は何食わぬ顔をしながら、水面下で気脈を通わせていたのだ。両氏に近い大物政治記者は、
「憲法改正と保守糾合を目指す安倍総理と小池氏は、少なくともある一点で完全な共闘関係にあった」
として、次のように解説する。
「その一点とは、悲願の憲法改正に難クセをつける邪魔者を一人残らず炙り出すことで、保守勢力の大糾合へ向けたプラットフォームを作り上げることだった。ホンネを隠し切れずに口を滑らせた排除宣言の小池氏には誤算もあったが、当初の目的からすれば、今回の総選挙は安倍総理と小池氏のシナリオ通りにコトが進んだと言っていい。実際、枝野氏らの立憲民主党にスポットライトこそ当たったものの、保守に回帰する道は完全に閉ざされてしまったため、将来的には社民党のような末路を辿ることになるだろう。安倍総理も小池氏も細工は流々、シメシメと思っているはずだよ」
だからこそ、安倍総理は選挙戦での街頭演説でも小池氏を名指しするのをあえて避け、「当選したいがために看板を替える人を信用できますか」などと、ギリギリの線でお茶を濁していたのだ。
森 省歩(ジャーナリスト)