一方の小池氏も「安倍一強政治を許すべきではない!」などと意気軒高だったが、これも巧妙に計算された政治パフォーマンスだったという。大物政治記者が続ける。
「安倍総理は選挙期間中にもホットラインで小池氏に電話を入れ、『あなたの悪口は(小泉)進次郎に任せることにした』『私は口にしない』くらいのことは囁いていたよ。さらに言えば、総理には、保守糾合のためには一定程度、小池氏が率いる希望の党に勝ってもらわなければ困る、という胸算用もあったはずだ。有権者にとってはにわかには信じ難い話かもしれないが、これくらいの駆け引きは、生き馬の目を抜く政治の世界では日常茶飯事。昨日の敵は今日の友どころか、今日の敵こそ今日の友なんだよ」
また、以前も指摘したことだが、この間には「小池氏は石破氏を派閥ごと引き抜く大連立を秘かに画策している」との仰天情報も永田町を駆け巡った。ところがこれもまた、「安倍・小池シナリオ」に描かれていた陽動作戦。舞台裏を知る官邸関係者の証言を聞こう。
「小池さんが石破さんを担ぐ、との情報をマスコミにリークしたのは安倍官邸と自民党。そして間髪を入れずに、小池さんが石破さんの選挙区には希望の党の候補者を立てないことを表明した。自民党総裁選は来年秋に行われるが、党則まで改正して3期連続を狙う安倍総理にとって、最大の脅威となるのが目の上のタンコブの石破さんだ。ただ、早期に名前の挙がった候補者がことごとく潰されてしまうのも総裁選の常。そこで、安倍総理と小池さんが今回の総選挙に乗じてひと芝居を打ち、『石破総理・総裁』の芽を摘み取っておいたというわけです」
当初、石破氏がまんざらでもない顔をしていたことは既報の通りだが、その後、この話題がマスコミで頻繁に取り上げられるようになるや、石破氏は複雑な表情を見せるようになった。請われて自身のグループ『水月会』を旗揚げしたものの、反安倍勢力の結集に苦慮している石破氏にとって、今回、水面下で仕掛けられた安倍・小池爆弾は思いがけない一撃になったのだ。
同様のことは、小池氏の盟友として知られる野田聖子氏(57)にも見事に当てはまる。小池氏はこの野田氏の選挙区にも対立候補を送り込まなかったが、野田氏は反安倍の旗幟を鮮明にしながら、小池氏と同じく初の女性総理の座を狙うライバルでもあるのだ。
「そもそも、刺客云々に関わりなく、野田さんの選挙地盤は盤石です。にもかかわらず今回、小池さんに妙な形で抱きつかれて『彼女は私まで潰そうとしているのかしら』と、野田さんは困惑と警戒の色を強めていました」(野田氏に近い政界関係者)
森 省歩(ジャーナリスト)