JR東日本が荷物専用の新幹線車両を開発し、「貨物新幹線」を運行する方針であると報じられた。
それによると、座席がなく出入り口が大きな車両を開発し、1編成に先頭車両を含む2両程度を組み込んで、荷物と乗客を同時に運ぶ「貨客混載」での運行を予定。荷は高級魚や医療用品、精密機器を考えているという。将来的には1編成まるまるを貨物専用車両にした「貨物新幹線」を視野に入れている。
貨物新幹線はこれまでになく、早く実現してほしいものだが、実はすでに実験とも言える取り組みが行われている。昨年7月、新潟市の朝採れ枝豆を上越新幹線で運び、都内の店舗で販売したのだ。今年8月にも同様の輸送と販売が行われている。
この取り組みから、貨物新幹線の荷が何になるのか分かると、鉄道ライターは言うのだ。
「輸送時間が短くて済み、揺れが少ないことから、海産物が多くなるのではないでしょうか。JR西日本と協力して石川や富山の海産物を、あるいはJR北海道と協力して函館の魚介類を東京に持ってくれば、売れるでしょう。朝獲った海産物を始発の新幹線で運べば、お昼前には東京に着きます。いずれ1編成まるまる貨物新幹線になれば、宅配便の荷物が加わることも考えられます」
現在、物流業界は人手不足のため苦境に晒され、貨物新幹線が登場すれば手助けになりそうだが、それには大きな問題を抱えている。指摘するのは先の鉄道ライターだ。
「荷物を日本各地に運ぶために、貨物列車は日本列島を北から南まで結んでいないと意味がありません。しかしJR東海がJR東日本に協力して、東海道新幹線に貨物新幹線を走らせることは考えられない。東海道新幹線は過密ダイヤですから、貨物新幹線を通す余裕はないからです。東京から西に荷を運べないのでは、荷主は限られるでしょう。結局、荷は海産物だけ、という事態になるかもしれません」
貨物新幹線が物流業界をどこまで救うことになるのか。今後の動向を見守りたい。
(海野久泰)