ツチノコの取材をしている最中に〝鬼の骨〟を見つけたという今井氏が畳みかける。
「山の中を歩いていたら白骨化した頭骨から2本の角が伸びてるんです。『ウァー』とびっくりして。カメラマンに撮影してもらったんですよ。映像を見て調べたら、それは鬼じゃなくてカモシカの骨だったんですよ。シカは1年で角が生え変わるんですけど、カモシカは頭骨から直接出てるんです。見るからに鬼にしか見えない。でも、そうやって連想できたこともうれしかった。自然との接点を繋ぐ想像力というものが、現代人の中にもまだまだあった。そういう想像力が、ツチノコにしろヒバゴンにしろ、引き付ける魅力があるんじゃないかな」
山形県の大鳥池には、タキタロウと呼ばれる巨大魚の伝説がある。正体は冷水を好む陸封されたサケ科の淡水魚とも言われるが、体長は2〜3メートルに及ぶという。
日本最大の淡水魚はイトウで、昭和12年、十勝川下流で捕獲されたイトウは210㌢が最大記録として残っているのだが、3メートルならイトウを優に超えることになる。
タキタロウはUMAというよりも、かつて存在したニホンオオカミやニホンカワウソといった絶滅動物なのかもしれない。
わからないことがあれば誰でも簡単にネットで検索できるのが現代。もはや70年代の当時のように目撃情報を信じるのは困難と言えるが、
「クッシーやイッシー、ヒバゴンなどが地域ニュースの主役になった時代は何だったのか。未確認生物の目撃情報が多発したあの頃は、世界的に見ても『未開の地』というものがなくなった時代だったんでしょう。その中で自分の身の周りの地域でもまだ見ぬ生物がいるんじゃないか。そういう地域に残る伝説をもう一度確かめる時代だったのかなと思いますね。その中でもヤンバルクイナ(81年に発見)が新種として発見されたりしましたから」(今井氏)
最後に、やかん氏が今後のUMAについて締めくくる。
「残念ながら多くの人が嘘をついてるし、その嘘を追っかけてきたんだなというのが正直な話。いろんな研究家がいて、持論を力説しているんだけども、明らかに作られた映像に関しては解説しないでほしい。信憑性が必要なんですよ。あとは誰が見たと言うと信じてもらえるか。そこが一番大きなところ。例えば田代まさしさんが目撃したとしても『ああ、またね』になってしまう。石坂浩二さんがゴム人間を見たと発言したことがあったんですよ。石坂さんなら信憑説はギリギリあります。それがアメリカのトランプ前大統領だと陰謀論に感じてしまうかも(笑)。とにかく国家レベルで言ってくれたら信用できるんですが‥‥」
荒唐無稽な未確認生物をテレビ・雑誌が大々的に報じた昭和はもはや遠い日に‥‥。
■もう一度見たい!?「昭和UMA」
ネッシー:イギリスのネス湖にいるとされるUMA。73年、石原慎太郎が「国際ネッシー探検隊」を結成、70年代のオカルトブームに加担した。その後、屈斜路湖の「クッシー」や池田湖の「イッシー」などの村おこし恐竜たちが次々と登場することに
ニューネッシー:77年、日本のトロール船「瑞洋丸」が太平洋上で引き揚げた巨大な生物の腐乱死体の写真を新聞が報じた。その死体が恐竜っぽく見えることから自称研究家が「首長竜では?」と騒いだが、サメを扱う業者はウバザメであると断言
ビッグフット:アメリカで目撃情報がある巨大な二足歩行猿人。身長2メートル、体重200キロ~350キロ。足跡は約47センチ。60年代にはパターソン・ギムリン・フィルムの影響もあって目撃情報が急増。同様のUMAにヒマラヤ山脈に住むイエティがいる
ヒバゴン:70年、広島県比婆郡(現・庄原市)にある比婆山麓で、身長160センチ、全身毛だらけで二足歩行の類人猿が相次いで目撃された。出没地にちなんでヒバゴンと命名された。目撃情報は次第に途絶えたものの、西城町の地元PRキャラクターなどとして活躍
ツチノコ:ヘビっぽい爬虫類的な姿をしていると言われる国産UMA。発見した場合に懸賞金を出す自治体も多く、特に兵庫県千種町は生け捕りした場合、賞金2億円としたことで話題に。「古事記」にも「ノツチ」として登場する
ケサランパサラン:白い綿毛のような毛玉の塊、謎の生命体。飼育法は桐の箱の中で、おしろいを食すとも言われている。オカルトを信じない昭和の女生徒たちが「占い」「こっくりさん」に続いて夢中になった
河童:昭和のUMAか!? と言われれば疑問符が付くが、全国で護岸工事による大規模な自然破壊でダムに繫がってない川がなくなってから久しい。現在各地で相次ぐゲリラ豪雨からの洪水は、川の神とされた河童の戒めなのだろうか?
南極ゴジラ:58年、日本の南極観測船「宗谷」乗組員が南極海で背中にのこぎり状のヒレがあるカバ顔の怪獣と遭遇。74年、日本の遠洋漁業船員が目撃した「カバゴン」との関連も指摘されている
タキタロウ:山形県・大鳥池に太古の巨大魚伝説が代々伝わる。65年の調査で捕らえた巨大魚は魚拓として村に展示されている。巨大イワナ説もある。漫画「釣りキチ三平」には「O池の滝太郎」として紹介された