「ネス湖のネッシー」「ヒマラヤの雪男」「北米のビッグフット」‥‥、70年代、世界各地で目撃された未確認生物(UMA)が日本でもセンセーショナルに報じられた。夢中になったのは子供ばかりか、大の大人でもその存在を巡り掴み合いのケンカまでする始末。科学発展途上の列島に襲来したUMAを再追跡!
まずは継続的に目撃情報が出るツチノコから。現在も捜索イベントが日本各地で行われており、中でも岐阜県・東白川村はツチノコの遭遇情報が相次いだ場所として知られている。
ドキュメンタリー映画「おらが村のツチノコ騒動記」の監督を務めた今井友樹氏は語る。
「80年代後半にツチノコブームがあったんですけど、それ以前から神様みたいな存在で、村ではツチノコじゃなくて『つちへんび』と呼ばれてました。ブームになり『私も見た』という情報が増えたんですけど、ツチノコは神の使いだから口にしちゃいけないとあまり話題にしなかった」
同地は天然記念物のニホンカモシカやオオサンショウウオも生息する自然豊かな村。まだ見ぬツチノコが出現しても変じゃない?
「私の祖母の兄が目撃者の1人だったので『ツチノコは絶対にいる』と子供の頃から聞かされていました。『コロコロと転がってくるし、噛みつかれたら大変だから気をつけろ』と。僕自身の体験は小学5年生の頃、斜面にあった30センチぐらいの石をはがしたら、その裏に全長20センチぐらいの〝何か〟がいました。とりあえず木の枝を探して、ツンツンしたら、ムニュムニュッと動いて足元に転がり落ちて来た。その瞬間、走馬灯のように昔親戚や近所のおばあちゃんたちに聞かされた、あのツチノコ話が蘇ったんです。触れたら大変だと怖くなって、逃げましたね」(今井氏)
怪獣コレクターでUMAにも造詣の深いタレントのなべやかん氏はなぎら健壱から聞いたツチノコ目撃談を代弁する。
「何でも、ツチノコを見たのはなぎらさんのお父さんなんですって。『あおむけに寝ていていびきをかいていた』って言うんですよ。ツチノコは瞬きをするとも。ヘビにはマブタがないですからね」
いびきをかくとなると、爬虫類ではなく意外と人間に近いのか? 具体的ではあるが、動画で見たいものだ。複数人がツチノコに遭遇している東白川村に話を戻そう。
「昭和30年代に炭焼きをやっていた方が木を伐っていたら、その倒した木の下敷きになって、ツチノコが死んでしまった。村の人たちにとってツチノコは神の使いだという認識なので、その場の土を掘って丁重に葬った。80年代終わりのブームの時、『ツチノコを探そう会』のメンバーたちがその話を思い出し、土を掘り起こした。その土は村にある『つちのこ神社』に奉納されてます」(今井氏)
つちのこ神社というのも驚きだが、そのツチノコ入りの土がご神体よろしく祀られているというのも何やら感慨深い。
映画を作るまでは、いもしないツチノコで村おこしするなんて恥ずかしいと思っていたと今井氏は語る。
「夢やロマンを村おこしの中心に据えて35年以上やってるのは東白川村しかないんですよね。毎年やってるツチノコフェスタには4000人ぐらいの人が集まって、宣伝効果など諸々を考えるとツチノコの経済効果は3000万円ぐらいあるらしい。それは確かにやめられない理由なんだなとは思いましたけど(笑)。東白川村のツチノコ懸賞金は132万円ですが、地元の人たちは目撃しても他言しないし、捕まえようとなんて思ってないですよ。その一方、フェスタに来る人たちのことも受け入れてますね。村人の素朴さの中にも外の人との交友がある温かみみたいなものを感じさせます」
親戚身内に1人はツチノコを見た人がいるのが当たり前という東白川村。目撃者の全員が嘘をついているとは思えない。