これが守備難のチームを救うアイテムになるかもしれない。
「みやざきフェニックス・リーグ」での中日×西武戦で、一塁の「ダブルベース」がお披露目された。通常の一塁ベースに加えて、ファウルゾーン側に同サイズでオレンジカラーのベースが設置されており、NPB(日本野球機構)と12球団が今回のフェニックス・リーグ中の一部球場で試験導入した。一塁のダブルベースはソフトボールではお馴染みだが、その目的は一塁手と打者走者の接触事故を防ぐことにある。スポーツメディア関係者が言う。
「攻守ともに、選手たちは違和感を持たなかったようです。一部選手からは『白いベースを踏んでしまった。慣れは必要』との感想が聞かれましたが」
そもそもだが、野球とソフトボールでは打者走者が一塁まで走る意味合いが違ってくる。ソフトボールはダイヤモンドが狭く、内野手が打球をファンブルすれば、たちまちセーフになる。そのため、打者走者は常に一塁まで全力疾走、内野手には捕球から送球までのスピーディな動きが要求され、全力で一塁送球を行う。それに対し、野球ではゴロ打球が転がった時点で打者走者は半ば諦めて、一塁まで全力疾走しないことが多い。
こうした現状を指して、こんな皮肉が聞かれた。
「阪神でテストしてみないと、ダブルベースの本当の効果が分からないかも」
阪神の三塁手、佐藤輝明の一塁送球のことを言っているのだ。
佐藤は12球団ワーストとなるシーズン23個の失策を記録したが、とりわけ送球ミスが目立った。一塁送球の際、ボールがシュート回転するケースが多く、一塁手の大山悠輔はホームベース側に左腕を伸ばして捕球していた。ホームベース側、つまり打者走者が走ってくる側に左腕を出していたのだ。
「阪神ベンチでは、佐藤の悪送球で大山がケガをする危険性が囁かれていました。ファーストミットをはめた左手はもちろん、体を打者走者に向けて衝突するのでは、と心配されていました」(在阪メディア関係者)
ダブルベースなら打者走者がベースひとつ分、ファウルゾーン側を走ることになるため、衝突のリスクは小さくなる。NPBは今回の試験導入の感想をフェニックス・リーグに帯同した監督、コーチ、審判員に聞き、実際に導入するか否かを決める。その行方は、佐藤の守備難が改善されるかどうかにかかっているのだ。
(飯山満/スポーツライター)