プロ野球の各部門のタイトルを見渡すと、打撃部門ではセ・リーグはヤクルトの村上宗隆が33本塁打、パ・リーグはソフトバンクの山川穂高が34本塁打でそれぞれ「本塁打王」の栄冠を手にした。
実は熱心な野球ファンが支持する、もうひとつの指標がある。「片岡式本塁打」である。この指標は現役時代に西武、巨人で活躍し、現在は解説者、野球指導者となっている片岡保幸氏の発言を元に、野球ファンが考案したものだ。
片岡氏は西武在籍時の2007年から2010年にかけて、4年連続で盗塁王のタイトルを獲得した韋駄天。巨人移籍1年目の2014年には、チーム最多となる24盗塁を記録している。
片岡氏は2009年の契約更改で球団から提示された年俸に納得がいかず、記者会見で「盗塁は本塁打と同じくらい価値があると思っている」と、盗塁の重要性を訴えた。
そこで、ファンによって「盗塁数+本塁打数=片岡式本塁打数」とする新しい指標が誕生。以降、毎年「片岡式本塁打王」が発表されている。
では今季は誰がその栄誉に輝いたのか。セ・リーグでは、33本塁打+10盗塁=43で、ヤクルトの村上宗隆が1位。次いで34のDeNA・牧秀悟、32の巨人・岡本和真と続く。
一方のパ・リーグは、ソフトバンク・周東佑京が2本塁打+41盗塁=43で王者に。楽天・小郷裕哉の39、ソフトバンク・山川穂高の34と続く。
セ・リーグでは長打力のある選手が上位に入っているが、パ・リーグでは逆に、脚の速さが大きな比重を占めている。
ちなみにこれまでのNPB通算は、福本豊の1273がトップ。2位の王貞治は952、3位のイチローは943(日米通算)となる。いずれも俊足の選手が上位を占めているため、盗塁の重要性を訴えた片岡氏は納得しているのではないか。
「片岡式本塁打」は指標としては非常に興味深く、長打力と走力を兼ね備えた選手を評価できるのがポイントだ。今ならドジャースの大谷翔平がダントツなのは間違いないだろう。
打撃部門には様々なタイトルがあるが、たまにはこのような遊び心のある指標を見てみるのも、野球の楽しみ方のひとつではないだろうか。
(ケン高田)