朝日新聞が10月21日付朝刊で、10月27日投開票の衆院選について、自民党と公明党の与党が過半数(233議席)を維持できるか「微妙な情勢」と報じたことが波紋を広げている。
これまでのメディア各社の情勢調査では最新のものであり、しかも朝日新聞は各社が3年前に軒並み議席予測を外す中で、おおむね予測の範囲内の結果だった。そのため、信頼性が最も高いとみられているのだ。
「微妙」としている同紙の議席推測を見ると、自民党の議席推計は184から217で、中心値は200。公明党は17から33で、中心値は25だ。単純に自公の中心値を足すと225で、233議席には8議席足りない。
自民党が政権を奪還した2012年の衆院選以降、単独で過半数を維持してきたものの、今回は「割り込む公算が大きい」としているが、自公を足しても過半数割れする可能性を指摘していることになる。
石破茂首相は10月9日の記者会見で、こう語っている。
「今回の選挙が非常に厳しいことは私自身、よく承知している。なんとか自民党、公明党で過半数を確保できるよう、全身全霊を尽くす」
そして自公での過半数を、今回の衆院選の勝敗ラインに設定した。自公で過半数に達しなければ、石破首相の責任問題が浮上するわけだ。
そこで永田町で囁かれているのが、1998年の再来である。この時の首相は、石破首相と同じ慶応大学法学部出身の橋本龍太郎氏だった。慶応大学出身の首相は犬養毅、橋本、そして小泉純一郎に続いて、石破首相で4人目となった。
石破首相と橋本元首相の共通点は、歯に衣着せぬ言動だ。口調は異なるが、説教っぽい言い方も似ている。国民的な人気はあったものの、橋本元首相は「恒久減税」をめぐる発言のブレを批判され、60議席の予測が外れて44議席に低迷し、その責任を取って退陣した。
石破首相は総裁就任前は世論調査で支持を得たが、当初は政策活動費を選挙に使用する可能性に言及していたものの、その後、一転して「選挙に使うことはいたしません」と明言。発言のブレがたびたび指摘されている。このためか、時事通信が10月11日から14日に実施した世論調査で、内閣支持率が28%と、発足時としては2000年以降の歴代内閣で最低を記録した。
支持率2割台は政権を維持できるかどうかの「危険水域」とされるだけに、橋本元首相のように退陣に追い込まれるか…。石破首相にとっては就任早々、政権の座をかけた選挙戦となっている。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)