サッカーJ2の昇格プレーオフ争いが白熱している。3位から6位までの4クラブに出場権が与えられる中、第35節を終了した時点で3位のV・ファーレン長崎は勝ち点66で当確ランプが灯る一方、4位ジェフユナイテッド千葉、5位ファジアーノ岡山、6位ベガルタ仙台が58で並んでいた。その混戦模様に割って入るべく猛追しているのが、7位のモンテディオ山形だ。
10月20日の2位・清水エスパルス戦では、後半30分に先制点を奪われる苦しい展開ながら、渡邉晋監督の采配がズバリ的中する。
清水は勝てばJ1昇格が決まるだけに、ホームスタジアムはお祭りムード。しかし、山形は途中交代の高橋潤哉が後半35分に同点ゴールを奪うと、同じく途中から投入された後藤優介が終了間際に、セットプレーからヘディングを叩き込んで逆転勝ち。清水サポーターは静まり返った。
これで山形は9月から負けなしの6連勝。勝ち点57で混戦の3チームに1差まで迫った。そんな山形の快進撃を支えているのが、7月末にJ1鹿島アントラーズから完全移籍で加入したMF土居聖真だ。サッカーライターがその移籍について説明する。
「下部組織のジュニアユースに所属してから約20年間を、鹿島で過ごしてきました。2016年にJ1優勝と天皇杯優勝、2018年にはAFCチャンピオンズリーグ制覇に貢献しています。『ワンクラブマン』として、鹿島一筋で引退すると思われましたが、2022年シーズン以降に出場機会が激減すると、小学校卒業まで過ごした地元の山形から熱烈オファーを受けて、移籍を決断したというわけです」
日本代表には定着できなかったが、攻撃センスとテクニックは折り紙付き。J屈指のイケメンとしても知られる「アイドル」の移籍に、鹿島サポーターは驚いた。サッカーライターが続ける。
「32歳でベテランと呼ばれる年齢ではありますが、山形としては移籍金を払ってでも欲しかった選手。加入直前まで13位と波に乗れなかったのですが、土居が第25節のファジアーノ岡山戦で新天地デビューを飾ると、その期待に応えるかのように、トップ下のポジションで躍動。鋭い飛び出しでいきなり1ゴールを挙げました。ひと足先に移籍してきた点取り屋のFWディサロ燦シルヴァーノとのコンビネーションが徐々に噛み合っていき、J2では手がつけられない無双状態に突入というわけです」
常勝軍団で培われた勝者のメンタリティーを土居が吹き込んだことで、山形を戦える集団に変貌させた。土居の移籍後は9勝1分1敗と、驚異的な数字を残している。
残り3試合でこのままプレーオフ圏内に滑り込めるのか。下剋上を予感させる「山形の王子様」土居のレベチなプレーを注視しない手はないだろう。
(風吹啓太)