常に「公正」を謳う公営ギャンブル界においては、不正行為の防止のため、スマホの扱いに敏感で目を光らせているが、それでも─。
「笠松競馬では21年、3人の騎手と調教師が組んで馬券を不正に購入し、約2000万円の利益を得たとして書類送検されている。主催する岐阜県地方競馬組合は再発防止のため、調整ルーム内に監視カメラや集音マイクを設置し、コンサート会場などで利用される通信抑止装置も導入。スマホを持ち込んでも通信ができないようにした」(スポーツ紙デスク)
この通信抑止装置は、ボートレース界でも導入されており、
「20年1月に当時の男性レーサーが八百長をして現金を受け取った疑いで逮捕され、懲役3年の実刑判決を受けた。以前から禁止されていた、スマホを不正に持ち込んでの犯行だった」(スポーツ紙レース部デスク)
これを機に日本モーターボート競走会は、20年度末までに、空港で使われているものと同じゲート式の金属探知機を全レース場の私物検査場の入り口などに配備。検査体制のさらなる強化を図ると発表した。
スポーツ紙カメラマンがレース場での徹底した不正防止策を明かす。
「中央競馬では一般のファンが望遠のレンズを使ってレース写真を撮っている姿をよく見ますが、ボートレース場では勝手に撮影するのはNG(撮影許可の申請が必要)。カメラレンズの反射でスタートミスが起こる可能性もありますし、選手と何らかのコンタクトを取っているのでは、と不正の疑いを避けるためです」
競輪関係者も一様に、JRAの管理体制の甘さを指摘する。
「我々から見れば、昨春まで調整ルームにスマホを持ち込めていたこと自体に驚いた。競輪界では宿泊する建物ではなく、管理敷地内に入ったところからスマホは使えない。若い選手の中には、敷地の門の前で恋人や愛妻と電話をしている姿をよく見る。愛車で駐車場に入るケースもあるが、6年ほど前、車内にスマホを置き忘れただけで2カ月の出場停止処分を科せられた選手もいた」
競輪界では日本競輪選手養成所の10カ月間、外界との接触は遮断され、スマホのない生活を送る決まりだ。競輪関係者が続ける。
「1日の自由時間は90分ほど。外部への連絡は公衆電話からという生活ですが、1週間もすれば大半の候補生が慣れる。中には在校成績がトップクラスでありながら、スマホの使用で一発退所というケースもある。ここでルールが守れなければ、競輪選手になっても同じです。昨年度の売り上げが8兆円を超える公営競技に身を置く以上、ファンから疑惑すら持たれてはならない世界だということをしっかりと伝えている。競輪の売り上げは一時期6000億円台まで落ち込み、やっと1兆2000億円まで回復した。公正確保の取り組みは当然の流れです」