衆院選最終盤の情勢について、自民党と公明党の議席を合わせても222議席で、過半数(233議席)を11議席割り込むとの予測を出したのは「週刊文春」だ。他の報道各社の調査でも軒並み、自公過半数割れを予測しており、自民党内では9月の総裁選で石破茂総裁(首相)を選んでよかったのか、と自問する声が出ている。
「週刊文春」とともに最終分析を行った政治広報システム研究所の久保田正志所長は、自民党が10月18日の中間予測の204議席よりもさらに減らして197議席と、200議席割れした理由について、次のように語っている。
「公示後の17日に公開された時事通信の世論調査では、石破内閣の支持率は衝撃の28%。発足時としては2000年以降の歴代内閣で最低の数字をなりました。こうした石破首相の不人気ぶりが、全国の小選挙区で大接戦となっている候補者たちの足を引っ張り、〝当落線上″から〝落選危機″へと転落させています」
このコメントに反応したのが、ブロガーの藤原かずえ氏だ。自身のXに綴ったのは、
〈世論調査で長期間にわたって現役の総理よりも『総理にふさわしい』とされてきた石破茂氏が、どの総理よりも内閣発足時の支持率が低く、選挙も大敗が予想されています。何の実用性もない無責任な調査結果が、見事なまでに、政局と大衆操作に悪用されてきたということです〉
確かに石破首相は報道各社の世論調査で、「次の首相にふさわしいのは?」との質問で常に上位にランクされてきた。これにはカラクリがあることを、総裁選で石破首相の対立候補だった茂木敏充前幹事長がバラしている。設問の名前の並びが常に50音順になっているためだ。茂木氏は、
「(石破氏は)名前順で最初に出る。(私は)常に最後なので、圧倒的に不利な立場にある」
とボヤいていた。
石破首相は「党内野党」として、安倍晋三元首相らが進める政策に歯に衣着せぬ批判をしてきたため、一部リベラルメディアからの人気が高く、それが世論調査に反映されてきた。藤原氏が言うように、世論調査の結果を背景に、「不人気の岸田文雄前首相に代わって、人気のある石破氏なら総選挙を乗り切れるだろう」として、高市早苗氏には抵抗感を覚える議員たちから支持を受けて当選した。
ところが実際に首相になってみると、現実の世界に直面し、これまで勝手に言ってきたことを修正せざるをえず、言動がブレているとして、支持率の急落につながった。ある閣僚経験者は後悔の言葉を漏らす。
「ここまで不人気とは思わなかった。それだったら総裁になるには修行不足と思ったが、人気者の小泉進次郎選対委員長を総裁にしておけばよかった」
自公で過半数割れするかどうかは報道各社で見方が分かれているが、自民党の単独過半数割れは、各社とも一致している。大幅な議席減は避けられず、石破首相の求心力は低下している。最短なら自公大幅過半数割れで即退陣、もっても来年3月の来年度予算案が成立するまで、との厳しい見方が広がっている。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)