競馬界を独走するルメール騎手の勢いが凄い。7月最終週にトップを行く川田将雅を追い抜くと徐々に差をつけていき、今や30勝差でリーディングを突っ走る。競馬はルメール中心に動いていると言っていいくらい、その存在は大きなものとなっている。
今週の天皇賞・秋(GⅠ、東京・芝2000メートル)も、ルメール騎乗のレーベンスティールが中心になるとみられているが、枠順が発表されて迷い出した人は多いことだろう。
レーベンスティールは8枠14番からのスタートとなるが、この枠は過去10年で一度も連に絡んだことがなく、3着が1回あるだけ。スタートしてすぐにカーブとなるため、大外枠は不利となっている。そもそも10番枠より外はこれまで未勝利で、通算では〈0・2・4・56〉。迷うのも当然だ。
レースの大きなポイントとしては、ルメールがどう乗るのかにかかっていると言っていい。いや、出していって先行勢の動きを見てどうするかを決める、となるだろう。幸い、ひとつ内目の枠に先行したいシルトホルンがいるので、苦もなくそれができるはずだ。
忘れてならないのは、今週から芝コースがBコースに変わること。内側から3メートル外側に移動柵が設置され、痛んだ箇所がカバーされるのだ。そのため、先行馬が残りやすく、後方一気はまず決まらない。ルメールはそれを分かっているだろうから、後方からの競馬にはならない。事実、レーベンスティールは前2戦とも、中団より前の競馬で勝っている。
レーベンスティールこれまで東京競馬場では、エプソムカップの勝利を含めて3戦2勝2着2回と、コース相性は抜群だ。そのエプソムカップでは59キロを背負って芝1800メートルを1分44秒7の好時計で走ったように、時計勝負にも対応できる。
不安点を挙げるとすれば、前進気勢が強いため、掛かるところがあることだ。前走のオールカマーでは、逃げた2着馬アウスヴァールが前半にペースを落とすと、行きたがってみせた。ただ、今回は先に行きたい馬が数頭いることで、大きな心配はいらないだろう。
もうひとつは、強い馬と戦ったことがほとんどない点だ。シャティンでの香港ヴァース(8着)を別にすれば、昨秋のセントライト記念でソールオリエンスを負かしたことがあるぐらい。そして国内GⅠはこれが初めてとなる。いわば、ここは試金石の一戦だ。
それでも勝つようなら、リアルスティールの後継種牡馬として、フォーエバーヤングとともに大きくクローズアップされることになるだろう。
(兜志郎/競馬ライター)