Jリーグは昇降格争いの佳境にあるが、J3リーグでついにJ2自動昇格に王手をかけたのが、現在2位のFC今治だ。
日本代表元監督の岡田武史氏が代表取締役会長を務めるクラブは、2020年にJ3に参戦。昨シーズンは4位に終わり、昇格まで勝ち点差わずか3と悔し涙を流したが、
「今シーズンから岡田会長は、1998年フランスW杯を監督と選手として共に戦った服部年宏氏を指揮官に招き、チームを託しました。ボールを保持するポゼッションサッカーをベースにして、開幕から4連勝でスタートダッシュに成功。しかし第11節から第14節まで泥沼の4連敗を喫し、昇格どころか11位まで順位を落としたのです。そこから服部監督が夏場に走り負けないチームを再度作り上げて立て直すと、しぶとい戦い方で2位まで押し上げました」(サッカーライター)
今治がJ2昇格となれば、日本のサッカー界に新風を吹き込むことになる。というのも、人口15万人の愛媛県今治市で親会社を持たないクラブの躍進は、町おこしに貢献しているだけではなく、地域振興の役割を担っているからにほかならないからだ。
昨年1月に海賊船をイメージした新本拠地「今治里山スタジアム」(現在の名称は「アシックス里山スタジアム」)が完成したが、試合がない日には地域住民が通えるように、ドッグランやイベントに利用できる交流施設、さらに就労支援施設などが併設されている。
とはいえ、スタジアムの総工費は約40億円。半分は金融機関から借り入れているため、返済するには集客力の向上が絶対条件となる。
「もともと岡田会長は『2025年にJ1で優勝争いをするクラブ』を目標に掲げていました。しかし、その目標を達成できなかったことで、相当悔しがった。その思いが監督や選手に波及し、今季の好成績につながったと言っていいでしょう。現在のスタジアム収容人数は5316人で、J3チームとの対戦では、平均して4000人前後の観衆。4月に行われたJリーグ杯のヴィッセル神戸戦だけは、5000人オーバーの完売でした。やはりJ2に昇格すれば対戦クラブや相手選手の知名度が一気に上がるため、チケット完売のカードが期待できます。スタジアム自体はJ1の基準を満たす1万5000人までの増設が可能と聞きますし、とにかく借金返済が次へのステップアップへと繋がるでしょう」(前出・サッカーライター)
残り3試合を残して、今治の現在の勝ち点は64。3位のカターレ富山が57ということで、自動昇格へ必要な勝ち点は3となる。
岡田会長の口癖である「勝負の神様は細部に宿る」を忘れずに、悲願のJ2昇格を成し遂げたいところだ。
(風吹啓太)