日本の野球ニュースは、ロッテ・佐々木朗希のポスティングシステムによるメジャーリーグ挑戦が認められた件で溢れている。NPB(日本野球機構)関係者からは「プレミア12大会が始まったのに…」と、侍ジャパンの精鋭たちの活躍が二の次にされている実情を嘆く声が聞かれたほどだ。しかし、ロッテの苦悩は「佐々木ロス」だけではなかった。
レッドソックスからFAとなった好投手ブラッド・ケラーの獲得をロッテが狙っている、との一報が飛び込んできたのだ。
ケラーはロイヤルズ時代の2019年から2021年までは先発ローテーションを守ったが、その後は成績が振るわず、中継ぎに回ることが増えた。今年はホワイトソックス、レッドソックスの2球団を渡り歩き、計16試合に登板した。
「日本球界入りの可能性は高い」
と現地メディア関係者は言う。
今季、佐々木が挙げた10勝分の補強ができそうだが、数字以外の問題もある。
「国内FA権を取得した西野勇士の残留が確定していません。佐々木のポスティングを認めることが発表された11月9日、松本尚樹球団本部長が取材陣に応じ、佐々木関連の質問に答えた後、西野の慰留交渉の進捗についても答えています」(スポーツ紙記者)
松本本部長は「好感触」を口にしていたが、西野本人からの連絡はまだだという(11月11日時点)。
「西野は育成契約から支配下登録を勝ち取った投手。球団の育成部門における、象徴的な存在です。今季は先発登板して翌日に抹消される『投げ抹消』が3度もあり、そういった処遇に関して必要な戦力なのかどうか、不安に思ったのでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
メルセデス、カイケルの両外国人投手の去就も未定だ。戦力的な補強は大事だが、「チームの象徴的存在」が流出するようなことになれば、そのダメージは「佐々木ロス」以上となるだろう。
「佐々木は高校時代から怪物と称されていた金の卵。大事に育ててきました。対する西野は叩き上げ。彼が入団してきた頃、育成選手は選手寮ではなく、本社の工場関係の寮が割り当てられ、支配下選手との格差を痛感させられました。厳しい環境から這い上がってきた選手なので、若手から信頼されています」(球界関係者)
シーズン中から慰留交渉は行われていたそうだが、佐々木がいなくなることが決まった今、改めて慰留を訴えなければならない。
(飯山満/スポーツライター)