マッチングアプリを利用し、およそ90人の男性から1億円以上を騙し取ったとして、詐欺および窃盗の容疑で、井田しずく容疑者と新宿区在住の無職女性を逮捕したと、警視庁が発表した。
井田容疑者は相手に虚偽の説明をして信用させ、受け取った金銭をインターネットカジノやホストクラブでの遊興費に充てていたと供述するなど、容疑を認めている。
井田容疑者の手口は、過去に「頂き女子りりちゃん」として知られた渡辺真衣被告のそれと似ている。渡辺被告は「頂き女子りりちゃん」の名前で男性に恋愛感情を抱かせ、約1億5000万円を騙し取った罪で、懲役8年6カ月の判決を受けた(その後、上告)。今回の事件は捜査関係者の間で「第二の頂き女子」と呼ばれており、恋愛を装った詐欺の手口が再びクローズアップされることになった。
しかしこの手口を使うのは、女性だけに限らない。都内在住の40代女性は「頂き男子」にマッチングアプリで出会い、金銭を騙し取られたと語る。その男は頻繁に連絡を取り、女性に信頼を与え、次第に親密な関係を装うようになったという。女性は離婚経験からくる孤独な気持ちで、相手に恋愛感情を抱くようになったという。
「私はバツイチなんですが、彼はそんな私の話をよく聞いてくれて、いろいろと相談に乗ってくれました。それで少しずつ彼に惹かれていったんです。ところがある日、『車で事故を起こしてしまった』と連絡があり、『保険に入っていないから20万円が必要だ』と言われました。その言葉を信じ、私は言われるままにお金を振り込んでしまって…」
女性がその男に実際に会ったのは、たった一度きりだったという。それでもなぜ信頼してしまったのかと尋ねると、
「相手がマメに連絡をくれて、いつの間にか信頼してしまいました」
その後もやり取りは続き、次第に金銭の援助を求められるようになったと、この女性は語るのだ。
「そんな中、身内に不幸があり、彼との連絡を取る時間がなくなったんです。忙しくなると伝えた途端、彼からの連絡は一切なくなりました。家族に相談されるのを恐れたのかもしれません。あとになって騙されたと気付きましたが、彼はすでにアプリやSNSから退会しており、連絡が取れなくなっていました。もしかしたら、今も彼に騙されている人がいるのかもしれません」
さながら多数の被害者を生んでいる「ロマンス詐欺」の手口だが、恋愛感情を巧みに利用した詐欺被害は、全てがニュースにならないだけで、今もなお増加している可能性がある。
こうした詐欺に巻き込まれないためにも、利用者は冷静さを保ち、連絡頻度や信頼関係を過信せず、慎重な判断が求められる。