芸能

ビートたけしの名言集「『老い』『小説』そして『ドタキャン予告』」

「ちょっと熱っぽいな」

 11月のある日。レギュラー番組収録のため楽屋に入った殿は、早々にそう漏らすと、すぐさま風邪薬を飲んだのです。その後も、

「鼻の調子も悪くてよ。本格的に風邪かな? それともあれか、ここへきて蓄のうか?」

 と、鼻を押さえながら周囲に不調を訴えていました。

 基本、体が強く、常に体調良好な殿が、調子の悪さを訴えるのは大変まれです。

 が、調子が悪いからといって、暗い顔つきで終始不機嫌になり、周りにいらぬ気を遣わせる方ではありません。この日も、「熱っぽい」と言うわりには、いや、熱があったせいか、いつもよりやや高めのテンションにて、終始しゃべり倒していました。

さすがにこの年になると酒は弱くなるわ、スケベなことには興味がなくなるわ、もう何にもねーな。だけど、酒とおネエちゃんに興味がなくなったら人生つまらなくなるんじゃねーか、なんて思ってたけどよ、全然そんなことねーな」

 と、老いを受け入れたうえで、“だからどうした!”といった心境を、しみじみと語るのでした。で、唐突に、本当に唐突に、「おい、次の小説だけどな‥‥」と、話題を変えると、

「書く題材がねーんだよ。芸人の話とかお笑いの世界の話は散々やっちゃったしな(『浅草キッド』や『漫才病棟』)。だからって知らねー世界の話を書いてもウソくせーしな。書くとなると意外とないんだよな」

 と、次回作への苦悩を赤裸々に告白したのです。

 この時、殿がかつてテレビやラジオなどで、膨大な数の次期北野映画構想について、そこかしこで語っていたことを思い出し、「殿、以前、映画でやりたいとおっしゃっていた戦国時代の話で、『首』ってタイトルの物語がありましたよね?」と、ひと頃、殿が夢中で語っていた、大型戦国絵巻について、“小説の形でやるのはいかがですか?”と、生意気にも進言すると、殿は“あっ! それあったな!”といった顔つきになり、もうそこから先は思い出したように、実に具体的な「首(仮)」のストーリーをしゃべりだしたのです。

 で、これが呼び水となり、

「よく考えたら、前に一回台本を作りかけた『○○○』ってのもあるな」

「おい、あれだよ。『○○○』もあるじゃねーか!」

 と、矢継ぎ早に、“かつて映画でやろうとした、いくつかの物語”について熱く語りだしたのです。結局、都合3つの次期小説構想を確認し、収録を終えると、

「明日は寒そうだから、ゴルフ行くのやめるかな。だけど参ったな、俺が言い出しっぺなんだよな。行かなかったらみんな怒るな~」

 と、“たけし発案ゴルフコンペドタキャン構想”を漏らし、帰っていったのでした。体調が悪かろうが、「老い」「小説」そして、「得意のドタキャン予告」と、次から次に、わたくし的には「金言」に聞こえてならない言葉を放りこんでくる殿。最高です。ちなみに翌日のゴルフ、しっかりとドタキャンされたそうです。

ビートたけしが責任編集長を務める有料ネットマガジン「お笑いKGB」好評配信中!

http://www.owarai-kgb.jp/

◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
フジテレビ第三者委員会の「ヒアリングを拒否」した「中居正広と懇意のタレントU氏」の素性
3
3連覇どころかまさかのJ2転落が!ヴィッセル神戸の「目玉補強失敗」悲しい舞台裏
4
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」
5
巨人「甲斐拓也にあって大城卓三にないもの」高木豊がズバリ指摘した「投手へのリアクション」