最終節を目指してラストスパートのJリーグだが、3年連続の残留争いから生まれ変わったのが、J1ガンバ大阪だ。
今季は36節を終了した時点で4位。11月23日に行われる天皇杯の決勝にも4大会ぶりに進出を決める、大躍進を遂げている。
昨季は泥沼の7連敗でリーグ戦を終了、重苦しい空気が漂っていた。チームの方向性が見えないにもかかわらず、早々に就任1年目のダニエル・ポヤトス監督の続投を発表したことで、2024年シーズンに期待しているサポーターは少なかった、というのが実情だった。
しかも、かつての常勝軍団は現実を見つめ直し「7位以上」を目標に掲げる寂しい船出に。だが、スペイン人指揮官は思い切った軌道修正を行い、昨季の4-3-3から4-2-3-1へとシステムを変更。サイドのスペースを突かれた守備の弱点を補った上で、J屈指のCB中谷進之介や、パワーとスピードを兼ね備えたFWウェルトンらの大型補強がハマッた。
そんな復活を遂げたチームの中で、ひときわ輝きを放っているのが、ベテランと呼ばれる年齢になった元日本代表FWの32歳、宇佐美貴史だ。
2022年シーズンにアキレス腱断裂の大ケガを負い、長期離脱を経験。7カ月のリハビリを経て復帰したが、そこには幼少期から「天才」と呼ばれ、キレキレのドリブルで無双していた姿はなかった。サッカー担当記者が振り返る。
「シーズンオフの休みを返上して、足の筋力を鍛えるメニューを中心に、トレーニングに励んでいました。開幕に向けて例年以上に体を絞ると、第1節の町田ゼルビア戦に途中出場。後半終了間際に鮮やかなフリーキックでゴールネットを揺らし、敗色ムード濃厚だったチームを救いました」
勢いに乗った宇佐美は3試合連続でゴールを記録するなど、現在、12得点8アシストと大暴れ中。10月度の月間MVPと月間ベストゴールをダブル受賞している。
「戻ってきたドリブルの切れ味だけではなく、相手をあざむくヒールパスなど、ゴール前の豊富なアイデアは、お金を払ってでもぜひ見たいレベル。ただ、若手時代と明らかに違うのは、守備への貢献度ですね。ポヤトス監督はベテランでも例外なく、勝つために走れない選手は使いません。攻撃時はもちろんのこと、守備になればFWの宇佐美も奔走。何十メートルも全力ダッシュで相手選手を追いかけるようになり、そのたびにスタジアムはゴールを決めた時のように盛り上がるようになりました」(前出・サッカー担当記者)
鮮烈に復活した「ガンバの至宝」がチームを引っ張り、天皇杯で今季初タイトルをクラブにもたらすことはできるか。
(風吹啓太)