今年のプロ野球ストーブリーグが例年以上に盛り上がりを見せる理由は、エースや4番打者、守備の要といった大物選手をめぐる「FA流出バトル」が繰り広げられていることにある。
FA権を行使した阪神の4番・大山悠輔をめぐっては、すでに巨人が獲得の意思を示しているが、関係者の話として「静かな環境で、野球だけに集中してプレーしたい」という大山の心境を一部のメディアが報じたことで、埼玉県所沢市のベルーナドームを本拠地とする西武の名前も取り沙汰され始めている。
だが、大山のFA権行使を面白く思わないファンは、SNS上で大暴れ。誹謗中傷のみならず「殺害予告」まで飛び出す事態になっている。
〈もし読売に移籍したらこいつ雇って大山を討ってもらうか〉
Xにはそんな書き込みとともに、新聞紙に包まれた拳銃を思わせる写真がアップされている。あるいは大山の実家を挙げて、突撃を匂わせるような、悪質な書き込みも見受けられるのだ。
もはやここまでエスカレートすると、本当の阪神ファン、プロ野球ファンとは言い難いが、こうした大暴走に結構な数の「いいね」がつけられているのだから大問題だ。
前代未聞ともいえる4番打者の流出危機に、阪神・藤川球児監督は、
「残留しなかった時に、昔なら『裏切り者』のようなイメージがついた。そういうものは、自分としても変えていきたい」
自らがFA移籍経験者だけに、そんな言葉で大山を気使ったのだが、暴走するファンの耳にはいっさい届いていなかったようである。
そもそも「ストーブリーグ」とは、野球の試合がなくなる冬期に、ファンが暖かいストーブの周りに集まって、好きなチームや選手について語り合うことから、そう呼ばれるようになった。あまりに熱くなりすぎて、これ以上の騒動や事件に発展することだけは避けねばならない。
(ケン高田)