11月最終週に行われる「ジャパンカップ」に向けて、話題の外国馬が来日完了。そのニュースに競馬ファンは沸き立っているが、その前週、11月17日には京都のマイルGⅠ「マイルチャンピオンシップ」が行われる。
1980年代ならオグリキャップとバンブーメモリーの壮絶な叩き合い、1990年代ならタイキシャトルが他馬を子供扱いした大圧勝劇など、今も語られる名勝負があった。しかし、ほとんどの年で「どんなレースだったか記憶にない」と回顧されがちなのが、このマイルCSの特徴でもあるのだ。
実は今年の馬券戦略に、そのマイルCSならではの「印象に残らない特徴」は無視できないと、馬券師ライターT氏は言う。
「言葉は悪いですが、一流のGⅠと二流以下のGⅠを分けるならば、マイルCSは後者。その大きな理由として、春の安田記念と同じマイルのGⅠでありながら、こちらはスプリンター気質の馬が馬券になることが挙げられます。そしてなにより、このレースが大得意という馬が存在していること。つまり、たとえ他のレースでは勝てなくても、マイルCSだけは馬券になってしまう馬が多発しているのです。これが一流のGⅠとは言いがたい原因ですね」
いわく、スプリンター気質の馬が激走することで「クラシックと無縁だった無名馬が馬券になりやすい」、マイルCSが得意という馬が何度も馬券に絡むことで「前にも見た気がする」というのが「印象に残らないレース」にさせているというのだ。今年の馬券戦略は、その中の「得意馬」から買えば、おのずと的中に近づくと、T氏は語る。
確かに過去10年を振り返ると、フィエロ(2014年、2015年ともに2着)、ペルシアンナイト(2017年1着、2018年2着、2019年3着)、インディチャンプ(2019年1着、2020年2着)、グランアレグリア(2020年、2021年ともに1着)と、同一馬が立て続けに馬券になっている。
「これほど過去の成績表の上位に同じ名前の馬が載るGⅠは、ほかにありません。ここまで顕著なら、馬券戦略として利用するべきでしょう。昨年の1・2着馬であるナミュールとソウルラッシュが出ますからね。どちらも上位人気になるでしょうが、前哨戦として富士Sを叩いてうまく仕上がった馬が、毎年のように馬券になっていることを考えると、休み明けのナミュールよりソウルラッシュを軸に置くべきだと思います」(T氏)
1番人気に予想されるのは6戦4勝2着2回と、完璧な成績のブレイディヴェーグだが、T氏は「これは外すべき」と、まさかの断言だ。
「マイルCSは先に話した、スプリンター気質の馬が馬券になるレース。向こう正面で少し坂を上ったら、あとは下ってそのスピードで平坦直線を押し切るだけ。直線に坂のある東京競馬場の安田記念とは180度違って、2000メートル以上のGⅠでも勝負できるようなスタミナを必要としません。これまでの出走最短距離が1800メートルで、2200メートルのエリザベス女王杯を勝っているブレイディヴェーグが本領を発揮できるわけがない。買いたい人をあえて止めはしませんが、本気で儲けたい人はよく考えてほしい」
T氏の勝負馬券は、ソウルラッシュを中心に、ナミュールと好調な富士S組からジュンブロッサムを相手に、穴馬としてヴィクトリアマイル2着で「マイルが限界距離」のフィアスプライド、大穴馬としてマイル初挑戦のスプリンターであるウインマーベルを挙げた。外国馬のチャリンは「距離はピッタリなので押さえで」ということだ。
圧倒的1番人気を外して、マイルCS大好きホースから買う「デジャブ3連単」で、週末は大勝負といきたい。
(宮村仁)