前日本代表監督アギーレ氏(56)の後任人事で揺れる日本サッカー協会。2月3日の電撃解任後、世界的な名将からの「お断り」報道が相次ぎ、10人以上の名前があがっては消えるというドタバタ劇が続いている。
大仁邦彌会長の「3月下旬の国際親善試合には間に合わせる」の言葉を受け、霜田正浩技術委員長が2月8日、極秘渡欧した。スポーツ紙デスクが振り返る。
「新監督に求める条件の優先順位などの再確認などで候補者リストの見直しをしていました。そのやさき、前イタリア代表監督のプランデッリ氏(57)、元イングランド代表監督のホドル氏(57)、元インテルミラノ監督のマッツァーリ氏(53)が日本のオファーを断った、との現地報道が相次ぎました。そこで、霜田委員長は慌てて渡欧。この3人の誰にもオファーはしておらず、リストにも名前はなかったからです。実は、売り込みをかけたい代理人が本人に意思確認をしただけのことで、それがさもオファーしたかのように誤報された。“本命候補”との交渉で『私はリストの何番目なのか。優先順位が低いのでは』と誤解を与え、契約に支障を来す可能性があります」
日本はこの誤報だけでなく、猛烈な「売り込み」にも振り回された。ストイコビッチ氏(49)とレオナルド氏(45)だ。サッカー協会関係者が明かす。
「ピクシーは日本のテレビ局のインタビューに『オファーが来たら(監督就任を)受ける』と答えていましたが、協会のリストには名前すらなく、困惑しきり。現役引退後、母国セルビアでサッカー協会会長、クラブチーム会長を歴任した時のマネーロンダリング疑惑があるからです。だから今、母国には戻れず、パリに住んでいる。アギーレ氏と同じ疑惑のある人物は絶対ダメ」
日本が掲げる最優先項目としては、
「欧州のクラブチームで実績があり、できれば代表監督経験者が理想。それで手応えが悪ければ、南米出身の大物にシフトするつもりです」(スポーツ紙デスク)
それが「チャンピオンズリーグ(CL)での指揮か、選手として出場経験者」に緩和されたことで、欧州の3人にほぼしぼられてきているという。サッカー専門誌編集者が話す。
「協会関係者が元ローマ監督のスパレッティ氏(55)、カタールのクラブ監督を務める元デンマーク代表のラウドルップ氏(50)、元ウォルフスブルク監督のマガト氏(61)の3人と接触したとの情報が流れました」
スパレッティ氏の代名詞は「ゼロトップ」。一般的なFWを起用せず、中盤から前で細かいパス回しの攻撃的な戦術で、「ストライカー不在」と言われる日本にピッタリと見られている。
ラウドルップ氏はCL指揮経験なしだが、CLに出場し、ヴィッセル神戸でのプレー経験もある。パスをつなぐボール支配率重視で、日本好みだと言われる。
そして「鬼軍曹」マガト氏はウォルフスブルク時代には大久保嘉人と長谷部誠を、シャルケ時代には内田篤人を指導。日本人の特性も理解していることが強みだ。だが、サッカーライターの渡辺達也氏は苦言を呈する。
「ちょっと待ってよって感じですね。3人とも代表監督の経験がない。前回のW杯敗退の教訓を忘れたんですか。ザッケローニ氏に代表監督経験がなかったからこそ、(メキシコ代表を率いた)アギーレ氏を招聘したんでしょう。クラブチームは監督がスタメンを固定し、ケガなどがあれば入れ替える。でも代表監督はクラブで活躍する選手を見定め、いちばんいい時に呼んで使う。交代枠の使い方も違う。日本は『今は緊急事態だから』と言っているようだけど、W杯最終予選の時期を考えれば、今秋までに決めればいい。もう失敗は許されないだけに、じっくりと慎重に選んでほしいですよ」
欧州組がダメだった際の南米候補者としてあがっているのはオリベイラ氏(64)や前ブラジル監督のスコラリ氏(66)、元チリ監督のビエルサ氏(59)などだが、
「06年のドイツW杯で1勝もできなかったトラウマから“ジーコ後遺症”が残り、協会スタッフにはブラジル人起用反対派もいる」(サッカー協会関係者)
迷走はどこまで続くのか。