恋愛感情を巧みに利用して、3人の男性から現金計約1億5500万円を騙し取り、詐欺罪などに問われた「頂き女子りりちゃん」に続き、11月初旬、またもや同様の事件で、27歳の女が逮捕された。マッチングアプリで知り合った複数の男性に恋愛感情を抱かせ、1億円以上を詐取した容疑である。
SNS上ではキャバクラ嬢「ゆう」を名乗っていた女が送ったのは、こんなメッセージだった。
「給料もらってお金をロッカーに入れてたの。そんでね、子どもを系列の託児所に預けてるからその代金を店長に払わなきゃいけなくて、渡そうと思ったら、ロッカー見たら全部無くなってて」
もちろんウソなのだが、畳みかけるように、
「先月まで親が残した借金の返済をしてたから貯金とかできなかったの。だから本当に(お金が)なくて。なんでもする!」
男性の感情に訴え、言葉巧みに金を無心したのである。同様の手口で約90人の男性と一度も会うことなく1億円以上をむしり取ったというから、驚くばかり。まんまと手に入れた大金は、インターネットカジノやホスト遊びに使ったという。
実はここ数年、SNSを使ったこの手の「ロマンス詐欺」が急増。2023年度、警視庁の調べでは、その被害額は177億円に到達した。しかも日本人だけでなく外国人女性、あるいは海外在住の日本人女性を装い、メールやチャットのやりとりで、恋人になったかのようにふるまう。そしてしまいには、金を要求する。今年6月には、国際ロマンス詐欺集団の主犯格とされる、ナイジェリア国籍の男が逮捕された。社会部記者が解説する。
「このグループはFacebookを利用し、海外在住の日本人女性を装って、国内の男女に接触。20人以上から計3億7000万円余りを騙し取ったとみられています。ナイジェリアにはこうした大規模国際詐欺グループがいくつもあり、アメリカでは以前から、ナイジェリア渡航の際に注意喚起を行ってきました。それが今、日本の犯罪組織を介して、日本で活動を活発化させているというわけです」
冷静に考えれば、国内に住む男性あてに突然、外国人女性や海外在住の日本人女性から連絡があり、恋愛感情を寄せられるなど、荒唐無稽な話なのだが、
「詐欺グループは『今日は何していたの?』『愛しています』と愛の言葉を囁き、オトナの雑誌などから抜き取った『自撮り写真』を送りつけて『もし結婚したらおカネが必要でしょ。ここに投資した方がいい』などと言葉巧みに誘導します。そして指定された口座に金を振り込んだ途端にドロン、というケースがほとんどです。詐欺グループのターゲットは、SNSに不慣れで『まだ俺はモテるんだ』と夢を諦めていない中高年男性。実際に引っ掛かりやすいわけです」(前出・社会部記者)
誰しも若かりし頃の青春を取り戻したい、という思いはあるものだ。しかも、もう何年も言われたことがない「愛してるよ」などという言葉を聞かされれば、ドキドキもするだろう。
だが、現実はそう甘くはない。甘い言葉の裏には魔の手が潜んでいることを、忘れてはならないのである。
(丑嶋一平)