プロ野球FA戦線が水面下で激しい動きを展開する中、西武ライオンズは潮崎哲也スカウトディレクターが、今オフのFA参戦を見送ることを表明した。外国人の補強を重視するという。
西武のFA撤退で、その動向に変化が見られる選手がいる。阪神から国内FA権を行使した原口文仁だ。原口は近年、代打としての出場がほとんどで、今季は52試合に出場し、打率2割4分1厘、2本塁打、9打点の成績。西武は山川穂高がソフトバンクにFA移籍した穴埋めとして、メジャー通算114本塁打のアギラーを獲得したが、今季は故障のため早々と戦線離脱しており、「右打ちの一塁手」として、原口はまさに補強ポイントにピッタリの選手だった。
原口の移籍先候補がひとつ消えたことで、有力候補となるのはどこなのか。ここで広島カープの状況をクローズアップしてみよう。
広島は今季、外国人が全く機能せず、勝負強い打者を主軸に据えることが急務となっている。原口と同じく阪神からFAとなった大山悠輔の獲得に動くとの見方もあるが、すでに巨人が最長6年契約、総額30億円の超大型獲得プランを用意しているとされる。マネーゲームに突入すれば、資金面で太刀打ちできないのは明らかだ。むしろ人的補償が発生しないCランクの原口の方が、獲得のハードルははるかに低い。
原口には他にも中日、オリックス、楽天が興味を示しているようだが、2018年の124打席以降、100打席未満しか打撃機会のない原口が、所属チームを変えたからとはいえ、143試合フルで活躍できる保証はない。場合によっては2002年にFA宣言しつつも他球団からオファーがなく、阪神に残留した桧山進次郎のようになるかもしれない。
西武の決断で、原口をめぐる交渉環境は、風雲急を告げている。
(ケン高田)