県庁職員へのパワハラ疑惑と、その告発文書の扱いをめぐって県議会から不審任を議決された斎藤元彦氏が、出直し兵庫県知事選挙で再選。当選後、11月19日に兵庫県庁に初登庁し、およそ1カ月半ぶりに知事に就任した。
新聞社と地上波テレビ、いわゆるオールドメディア各社は節操もなく手のひらを返して斎藤氏を称賛し、「新聞テレビの中立性」という言い訳に徹している。
ここで疑問がひとつ。SNS戦略が奏功したとされる斎藤氏の再選は、本当に「ネット民の勝利」なのだろうか。
橋下徹元大阪市長や泉房穂元明石市長がかつて出直し選挙で再選されたように、関西人は「改革派首長VS議会」「パワハラ首長VS怠惰な公務員」という対立構図が大好きだ。兵庫県議会は「対立構図の悪役路線」のレールに乗せられる術中にまんまとハマッてしまった。
まさかの再選となった斎藤氏が、選挙期間中にやらなかったことがある。「北朝鮮への補助金」の説明だ。
斎藤氏が「経費節減の実績」として強調しているのはただひとつ。公用車のトヨタ高級車センチュリーから高級ミニバン、アルファードのリース契約に変更したことだ。センチュリーのリース料が月額約25万円なのに対し、アルファードのリース料は約8万円。年間200万円以上、任期の4年間で800万円超の経費削減につながるという。
4年間でわずか800万円の節税効果を強調する一方、今回の再選によって今後、4年間で2億円近い血税を「北朝鮮に貢ぐ」ことが決定的となった。
斎藤知事は就任後2年で、朝鮮学校への補助金8340万円を県政予算に盛り込んでいる。「赤い大地」北海道や京都など、全国11道府県の1年間の朝鮮学校補助金の総額が約7000万円だから、間接的ながら、斎藤県政の「北朝鮮への貢ぎぶり」がいかに突出していたかがわかる。
SNSやYouTubeを活用した選挙運動を展開してきたのは、斎藤氏だけではない。今年6月の都知事選で165万票を獲得して次点だった石丸伸二氏、5位に食い込んだ安野貴博氏、衆議院選挙で28議席を獲得した国民民主党の玉木雄一郎代表と榛葉賀津也幹事長も、YouTubeで独自政策を訴えてきた。彼らは情に訴えることもない、一方通行で政治主張を押し付けることもない、客観的なデータを示し、質問に答える「有権者とのキャッチボール」を丁寧に続けてきた。
出直し知事選で斎藤氏に票を投じた兵庫県民が、ネットリテラシーを欠く残念な人たち扱いされるのか、あるいは人を見る目があったと評価されるかは、斎藤県政のこれからの4年間と「百条委員会」「第三者調査」の行方にかかっている。
(那須優子)