大相撲九州場所を5勝2敗で勝ち越した、木竜皇という幕下の力士がいる。これにより、わずか1場所での返り十両を確実なものにしたわけだが、その背景には「二世力士」とは思えないハングリー精神があった。角界OBが解説する。
「新十両で迎えた今年の9月場所は4勝11敗で、うち2勝が不戦勝による白星。わかりやすく、十両の壁に跳ね返されてしまいました。関取に昇進したタイミングで、幕下以下の力士が生活する大部屋から個室に引っ越したのですが、陥落するなり『自分の実力がまだ足りないから…』と、自ら志願して大部屋に戻ったといいます。ほとんどの部屋ではいったん関取に昇進してしまうと、陥落してもそのまま個室に住まわせるケースがほとんど。木竜皇は元幕内・時津海の長男ながら、入門時から調子に乗るどころか、謙虚な性格で知られています。ある意味、変わっていますよ」
もともと高校卒業後に時津風部屋に入門することが決まっていたが、当時、師匠だった父親が自身の不祥事で退職した影響で断念。複数の縁が重なって、2021年5月場所から立浪部屋に入門した。先の各界OBが言う。
「最初こそ、不祥事を起こして相撲協会を追われた『時津海の息子』というレッテルを不安視していましたが、杞憂に終わった。というのも、時津海は気風のいい性格で知られていて、現役時代から一門や部屋に関係なく力士から慕われていました。その恩を返すように、地方巡業のたびに木竜皇は同部屋の明生ら先輩力士に稽古をつけてもらい、食事にも連れ出してもらえた。付け人として巡業に行くたびに体をデカくして帰ってきましたね」
愛されキャラの若手ホープ。関取に定着するのは時間の問題だろう。