「サッカー界の鉄人」と謳われた元日本代表の伊東輝悦が、32年目でプロ生活に終止符を打った。
所属するJ3アスルクラロ沼津は11月24日に最終戦を行い、試合後に伊東の引退セレモニーが行われた。ともに日本代表で戦った城彰二氏や前園真聖氏ら豪華な顔ぶれがビデオメッセージを寄せて、伊東を労う演出。口数が少なく、性格はいたってマジメ。プレーで引っ張るタイプで、多くの選手に慕われていた伊東にふさわしいシーンだった。
引退セレモニーのスピーチでは、チームメイトやスタッフ、家族に感謝の気持ちを伝え、
「素晴らしい選手生活を送れたと思います。本当にありがとうございました」
と頭を下げると、こう続けた。
「あと最後にもうひと言だけ、いちばん言いたかったこと。みなさん、これからもサッカーを楽しみましょう」
観客席からはサポーターから温かい拍手が送られたが、先だって10月31日に開かれた引退会見を思い出せば、あの服装がやはり…。
「サッカー選手の引退会見といえばスーツ、もしくはチームユニフォームが定番ですが、伊東が会見で着ていたのはオーバーオール。多くの人が違和感を抱いたようです」(サッカーライター)
実際に会見の映像を見ると、伊東は白いTシャツの上にデニム素材のオーバーオールを着用していた。サッカー選手というより「現場作業員」という表現の方がしっくりくる。晴れの舞台にガテン系ファッションを選択したことには、理由があった。
「伊東が着ていたのは、アスルクラロ沼津のスポンサーである山本被服の人気商品です。同社は戦前からデニム素材の作業服を製造する老舗企業で、あのオーバーオールはアスルクラロ沼津のサポーターの間では、選手たちの移動着として知られています。伊東の会見の効果で、全国から問い合わせが殺到し、売り上げに貢献したと聞いています」(前出・サッカーライター)
引退会見では「サッカーに恩返しがしたい」と語っていた伊東だが、スポンサーへの恩返しは十分に果たしたようである。